フランス「Cityzi」は年内ローンチ延期か?
欧州でNFCに積極的なのがフランスだ。「Cityzi」というサービス名で、Orange、SFR、Bouygues Telecomと同国の主要オペレーターが参加しており、2010年にニースでトライアルがスタートした。地元の交通機関なども参加しており、乗車券として利用できるほか、タグをかざすことで時刻表や運行状況などの情報を取得できる。
当時、Googleの強力なプッシュによりNFCが盛り上がるか、iPhoneも搭載かなどと期待が高まったこともあり、フランス政府は積極的にCityziをプッシュした。おそらく、米国企業や米国サービス(Google Walletの拡大やiPhoneでのNFCサポート)の上陸前に、自国企業によるエコシステムを確立しておきたかったのだろう。
トライアル開始から3年の間に利用できる都市を拡大し、サービス側でもロイヤリティーカードを管理できる「Cityzi Fid」開発も進めるなど拡大してきた。Cityziを推進する業界団体AFSCM(Association Française du Sans Contact Mobile)によると、9月時点で利用できる端末は約40機種、約400万人をカバーするという。
だが、NFC Timesが独占情報として報じたところによると、予定していた2013年内の全国ローンチが延期することになりそうだ。遅れの理由の1つとして、セキュアエレメントを管理するTSMとSIMの相互運用性が上がっているという。
欧州でもiZettleなど、Squareと似たスマートフォンに小型のクレジットカードリーダーを組み合わせたモバイル決済ベンチャーが台頭しており、NFCでなければならない理由がわかりにくくなってきたようにみえる。
「NFCは現時点では魅力的ではない」
NFCでなければならない理由がない――カナダのモントリオール市の地下鉄やバスを運営する交通局のマーケティング責任者と話す機会があったのだが、この担当者はそう感じているように見えた。
モントリオール交通局(STM)はすでに非接触ICカードの乗車券を提供しており、これをさらに強化する顧客サービスとしてモバイルアプリ「STM merci」を構築している。現時点では、位置情報や顧客の好みを分析して提携ショップからパーソナライズされた割引サービスを受けられる(生成されたコードを提示する)という内容だが、当然将来的にはクレジットカードとの紐付けによる乗車券の購入なども可能にしていく計画だ。
だが、現時点で開発中というソリューションはNFCではないとのこと。理由を聞いたところ、「NFC端末が少なく、土台が整っていない」と述べ、魅力を感じないと続けた。
以前ロンドン地下鉄の話を紹介したが(関連記事)、どうやらNFCが適していると思われていた公共交通機関での本格的な導入はなかなか進みそうにない。iPhoneがサポートすれば状況は代わるのだろうか? それとも状況が整わないからこそ、Appleはサポートしないのか?
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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