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まもなく2周年!北の大地に石狩データセンターあり 第2回

「イノベーション」から「ソリューション」への道筋を追う

インテルまで巻き込んだ石狩データセンターの実験の成果

2013年10月16日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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「イノベーションの苗床」からの第1弾はHVDC

 イノベーションの苗床である石狩データセンターにおいて、さくらインターネットが開所時から取り組んできたのが、電力コストを削減するHVDC(High Voltage Direct Current、高電圧直流給電)だ。HVDCに関してはTECH.ASCII.jpでも何回か記事化しているが、簡単におさらいしておこう。

3月に商用化を開始し始めた石狩データセンターのHVDC設備

 従来のデータセンターでは、発電所からの電力がUPSを介して、サーバーに届けられるまで、複数回の交流・直流変換を行なう必要があった。UPS内では交流から直流に変換して、バッテリへ蓄電。その後、直流から交流に再度変換し、サーバ内でさらに直流に変換され、ようやくCPUやメモリ、HDDが利用できる。変換効率が大きなロスとなるほか、設備面でも無駄が多い。これを解決するのが、UPSを用いず、サーバーに対して直接直流で給電するHVDCだ。HVDCの導入により、交流を用いた方式に比べ、約10~20%の電力削減が可能になるという。また、機器構成もシンプルになり、耐障害性が高くなるというメリットがある。

直流給電のメリット

 HVDCの有効性は以前から認識されていたものの、高電圧であるがため、安全性に課題があったほか、対応のIT機材が少ないといった課題があった。しかし、石狩データセンターでは、複数のベンダーとの協力により、敷地内にコンテナ型のHVDC実証施設を設置。開所以来、1年半に渡ってNTTデータ先端技術のHVDCシステムの実証実験を進め、安全性や効率性を検証した。HVDC対応のIT機器も増えたことで、最終的には2013年3月からHVDCを商用環境で利用し始めた。2013年3月時点での北海道電力の特別高圧の電力料金から試算したところ、年間で約2700万円の電力を削減できる見込みとなっている。ちなみに屋外にあったHVDCの実証施設は商用化とともに撤去されたという。

集中電源から各サーバーにDC12Vで給電するNTTデータ先端技術のHVDCシステムを採用

安定した直流給電を行なうためPSラック、各機器に配電を行なうPDU、バッテリなどを収めたPDUラック

 そして、さくらインターネットが新たに取り組んでいるのが送電の効率化だ。現状、送電に関しては電力会社に依存せざるをえない。しかし、自前で送電線を引くと、コストがかかり、大電力の送電に関しても課題が残る。これを解決するための技術の1つが、超伝導による送電システムだ。

 超伝導とは、極低温下で電気抵抗が0になる状態を指し、大電流を低い電気抵抗で送電できるというメリットがある。漏れ磁界がないため、洞道が不要で、大電力を安全・安価に送電できるため、石狩データセンターの直流給電システムに最適だ。さくらインターネットは、2013年1月には中部大学、住友電工、千代田化工と4社でコンソーシアムを立ち上げ、実用化に向けた技術・制度的な課題を抽出する経産省の公募委託事業を受託することになったという。

超伝導送電システムへの取り組み

 田中氏によると、「来年の今頃には500m程度の超伝導直流送電ケーブルができ、再来年には2000mのケーブルで実際に通電してデータセンターで検証していく予定」とのこと。今後、実用化が進めば超伝導送電された直流電力を石狩データセンターの直流給電システムに直結でき、同社が目指す「エネルギーの地産地消」にますます近づくことになる。

 真新しい技術の有効性を現場で試し、サービスに盛り込んでいく。「イノベーション」から「ソリューション」への流れを、HVDCや超伝導の事例は端的に表わしているようだ。

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