求められるのはソフトウェア中心のスタンダードなスタック
大谷:垂直統合型システム登場の理由について、「ユーザーが“ベストオブブリード”に疲弊した反動だ」という指摘もあります。オープンシステムは幅広い選択肢から最適なものをチョイスできる自由があるものの、ユーザーはその選択肢の多さに疲れてしまった。だからパッケージ化された垂直統合型システムが求められているのだ、という見方です。
布谷:構成済み、検証済みのシステムが欲しいというニーズはよくわかります。しかし、「ハードウェアについて選択の余地がないというのはおかしい」というのがわたしの意見です。顧客が求めるスタンダードな技術を安定稼動させるために、ハードウェアベンダーが事前検証を行うのは当然のことですし、「推奨構成」や「推奨パッケージ」は存在したほうが顧客もわかりやすいでしょう。ただ、必ず垂直統合型システムで丸ごと買ってください、というところに違和感を覚えるのです。
ソフトウェアベンダーが主導して、ソフトウェア中心のシンプルでスタンダードな垂直統合スタックを作るのであれば、それはユーザーにもメリットがあると思います。マイクロソフト、レッドハット、ヴイエムウェア、シトリックス、あるいは「OpenStack」や「CloudStack」でもいいのですが、今ではシングルベンダーのソフトウェアが幅広い機能と領域をカバーしています。ソフトウェアのレイヤー全体で相互運用性が確保されていれば、ユーザーは自らスタンダードを選択することができる。
つまり、デルとしては「ソフトウェア中心で、ソフトウェアのテクノロジーでシンプルにシステムを作りましょう」と、そういう意見なのです。システムの主役はソフトウェアなのだから、もっとソフトウェアベンダーがこの世界を主導していかなければならないと考えています。デル自身もM&Aで多くのソフトウェア技術を取得し、ソフトウェアのポートフォリオを大幅に拡充しています。ただしそれらはオープンなテクノロジーで、あくまでも顧客の要件に応じて選択できるモジュラー型の位置づけになります。
大谷:そうなると、企業のIT部門側にはより強く自立が求められますね。「ベンダーさんにお任せ」という態度ではなく、自らシステムのあるべき姿を理解して、決めていくという。
布谷:ベンダーと対等な立場に立って、ベンダーの助言も聞きながら自分でも情報を精査してみて、最終判断をしていく姿勢が必要ですよね。
Software-Definedなシステム、ソフトウェア中心の世界が実現し、いま20代~30代くらいの若手のIT部門所属の方が主導権を持って「正しいベンダーとのつきあい方」をし始めたら、システムのありようは大きく変わっていくと思いますよ。
デルはユニークなアプローチをとっていく
大谷:さて、ここまで「これからはソフトウェア中心の世界になる」という話をしてきましたが、デルはサーバーベンダーでもありますよね。クラウド管理ソフトウェアの買収などもしていて、ベンダーロックインをしようと思えばいつでもできると思うのですが……しないんですか?(笑)
布谷:今日はあまりデルの宣伝はしないつもりだったのですが、それでは少しだけ(笑)。
大手サーバーベンダーの中で、デルは非常にユニークな存在です。なぜならデル以外の大手ベンダーは、すべてレガシーシステムの世界から来た会社だからです。これが基本的な考え方の違いを生んでいるのだと思います。
デル自身も「Active System」などのコンバージドインフラストラクチャ(統合インフラ)製品を発表していますが、まだまだ道半ばの状態です。ただし2つの点で、他のベンダーとはまったく異なるアプローチを取っています。
1つは「マルチベンダー対応」です。他社の垂直統合型システムとは異なり、デルでは異なるベンダー製品の混在環境もサポートしています。すべてデル製品で統一することもできますが、例えばデルのサーバーにシスコのスイッチ、ネットアップのストレージを組み合わせることもできるわけです。ユーザーが選んだスタンダード、あるいはすでに導入済みのハードウェアに対し、デルは動作検証やサポートを展開していくというスタンスです。
もう1つは、インフラ全体を管理するオーケストレーションのソフトウェア「Active System Manager(ASM)」です。Active Systemの管理ソフトウェアでもありますが、これを単体で提供します。ASMは近年買収した製品で、もともとマルチベンダー対応のソフトウェアでした。このASMを中心に、周りにデルを含むハードウェアがぶら下がり、上にアプリケーションのシステムが乗るという構成になります。
大谷:まさに「ソフトウェアが中心」になるわけですね。
布谷:はい。デルではそういう世界が理想だと考え、そこに向かっていこうとしています。
(提供:デル)