myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」 第11回

ニコ動では艦娘MMD急増、pixivではエロから物語重視へ

艦隊これくしょんは関連動画3600万再生、イラスト4万枚

pixivではエロからストーリー重視への転換が進む？

　比較のために、艦これのCGM活動としては最も盛んなpixivのデータも見てみましょう。pixivでも同じく「艦これ」または「艦隊これくしょん」のタグのあるイラスト約4万点のデータを収集して調査してみました。

　pixivもニコ動とほぼ同時期から艦これ関連のイラストが投稿されており、投稿数の増え方も似た傾向を示しています。現在までに約1万5000名の投稿者によって約4万のイラストが投稿されており、規模はニコ動のほぼ10倍です。閲覧数の中央値は1176、評価点中央値は308。1万閲覧以上が1割ほどです。

動画投稿数は左軸、新規投稿者数は右軸。ニコ動と同じく6月から9月にかけて増加。夏コミ前後に一時的に減少しているところが面白い

　艦娘の人気としてはやはり島風が一番人気なものの、だんだん多様化している点は前述の通りです。ただしpixivでは現在も16％の作品に島風が登場しています。

　他の人気の艦娘はニコ動と傾向が異なり、天龍・金剛が強いです。また推移から見える傾向として、愛宕・高雄の高雄型の初期の人気と落ち込み、電や赤城・加賀の安定的な人気が挙げられます。

　全体の傾向として、pixivでの艦これのR-18作品（R-18タグありイラスト）の比率は6月の23％をピークに減っており、9月には11％と半減しています。一方で漫画作品（漫画タグありイラスト）は7月→9月で6％から7％へと若干増えてきており、ストーリーを動かしやすい艦娘が好まれている傾向があります。 愛宕・高雄のイラストは4割がR-18作品と親和性が高いらしく、減少にはR-18作品の割合が減った影響が考えられます。

　天龍は龍田とのカップリングが受けており、複数の艦娘の組み合わせでは天龍・龍田のイラストが最も多いです。同様に赤城と加賀も人気のあるカップルですし、金剛は金剛四姉妹、電は姉妹艦の雷ら第六駆逐隊と、それぞれのキャラクターの個性に加えて漫画などで使いやすい他の艦娘との関係性のあることが人気を支えてるのでしょう。

　同様の例としては、ランク圏外ですが北上・大井も最近人気のある艦娘です。ゲーム上で使い勝手の良い強力な艦であることと百合設定が二次創作につながったものと思われます。最近は話題性のあるTwitter botなども現れており、その影響もありそうです。

　また面白い動きとしては7月以降、敵方の深海棲艦である空母ヲ級がランクインし上位に上がってきている点があります。ランク外では他の深海棲艦のイラストも出ていますし、空母ヲ級はニコ動でもMMDモデルが作られるなど人気が飛び火し、現在は深海棲艦のMMDモデルも複数あります。

pixivの艦これイラストにつけられていたタグについて、特定の艦娘等を示すタグを関連付け、タグから艦娘ごとに使用されてるイラストの数を月ごとに調べて並べたもの。比率は月ごとの艦これ作品数で艦娘の作品数を割ったもの。同じく駆逐艦は青、軽巡・雷巡は緑、重巡はアクアブルー、空母は紫、戦艦は赤、その他は灰色で示してある。また艦娘以外のキャラクターには*をつけた

　ニコニコ動画やpixivなどのCGMサービスでは艦これブームはひとつの山を越えて、安定期に入りつつあります。現在も大量の作品が作られていますが、投稿者の増え方は落ちついてきました。

　艦これ本体のユーザー増加もやや鈍化しており、今月中に100万登録には到達すると思いますが増え方としてはそろそろゆったりするのではないかと思います。

　もっとも、これは艦これの衰退といった話ではなく、一過性のブームから、長期間続くジャンルに変わる段階に入った、ということかと思います。

　ニコ動ではMMDモデルがかなり出揃ってきたことから、そろそろMMD艦これでミリオンクラスの作品が出てくるのが期待されます。またpixivの艦これはエロから非エロのストーリー重視に転換しつつあり、東方Projectのような息の長い同人創作コミュニティに育っていく気配が感じられます。ヲ級や大井北上のようにTwitter・pixiv・ニコ動などで横断的に新たな人気が育っていく例もまた出てくるでしょう。

　書籍やフィギュアの展開、アニメ化やVITA版開発の報も入っていますし、いまだに関連書籍は完売騒ぎが続いています。艦これ人気の広がりはまだまだ見逃せないところです。

9月26日の発表会において、PlayStation Vita用ソフト「艦これ改 (仮)」およびアニメ化プロジェクトが進行中である旨が発表された