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「スマート・レジリエンス」—低コストかつ安全なインフラ構築を目指す

2013年10月03日 09時00分更新

文● 大河原克行

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 2013年10月1日から千葉県幕張の幕張メッセで開催しているCEATEC JAPAN 2013の開催初日に、東芝の佐々木則夫取締役副会長が、「成長の時代を導くトータル・ストレージ・イノベーションとトータル・エネルギー・イノベーション」をテーマに講演を行なった。佐々木副会長は、CEATEC JAPAN 2013の主催者のひとつである一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の会長を務める。

東芝の佐々木則夫取締役副会長

 講演の冒頭、佐々木副会長は、「電子情報産業は、グローバル社会が直面している課題に対して、ICTを活用したイノベーションを提示し、新たな市場を創出していく必要がある」と切り出した。

 佐々木会長は、電子情報産業の概要について説明。電子情報産業は、全世界で210兆円の市場規模を誇り、日系企業はそのうち17.8%を占める37.5兆円の市場規模となる。薄型テレビでは30%、PCや半導体では20%を占め、日本の電子産業は世界に欠くべかざる位置にある。

電子情報産業は、全世界で210兆円の市場規模を誇り、日系企業はそのうち17.8%を占める37.5兆円の市場規模となる

 国内の研究開発投資では、電子情報産業が日本の製造業をリードしているが、企業の競争力に直結していないという課題がある。国際標準化などを視野に入れた取り組みを進め、収益に結びつける仕組みの構築が必要である。設備投資、雇用などを含め、日本を支える基幹産業であることは間違いない。日本の成長のために電子情報産業のポテンシャルを活用し、日本経済を牽引していく必要がある」などとした。

国内の研究開発投資

設備投資

出荷額と雇用の割合

 また、安倍政権の打ち出したアベノミクス、大胆な金融政策と機動的な財政政策において、「第3の矢である成長戦略が、電子情報産業にとっては重要な施策である」とした。「行き過ぎた円高が是正されたことで、電機大手8社の売上高は回復基調にあり、実質GDPである3.8%を上回る、5%の伸びとなっている。もともとの競争力を裏付けるものであり、これを生かした本格的な業績回復と一層の競争力強化、そして新たな市場を開拓していく必要がある。日本の電子情報産業が持つ高度な技術により、優れた製品やデバイスを投入しているが、今後は、オープンイノベーションの活用や、他の産業との協力、システム化およびパッケージ化で高品質なサービスを提供。日本および先進国と、新興国に向け、社会の抱える様々な課題を解決していかなくてはならない」などとした。

電機大手8社の売上高は回復基調にあり、実質GDPである3.8%を上回る、5%の伸びとなっている

低コストかつ安全な社会インフラの構築を目指す「スマートレ・ジリエンス」

 佐々木副会長は、低コストかつ安全な社会インフラの構築を目指す「スマート・レジリエンス」(Smart Resilience。レジリエンスは強靱性などの意)について言及。「スマート・レジリエンス(の実現)には、情報通信ネットワークに対するサイバー攻撃への対策を含む必要である。2016年に開始されるマイナンバー制度などにより、公共ネットワークサービスが多様化する。これに伴い、機密情報および個人情報流出による2次的犯罪の増加などが懸念される。強靱な社会ネットワークインフラが求められており、生体認証技術やヒューリスティックウイルス検知技術、将来的には量子暗号を利用した技術の開発も必要である」とした。

低コストかつ安全な社会インフラの構築を目指す「スマート・レジリエンス」

スマート・レジリエンスには、情報通信ネットワークに対するサイバー攻撃への対策を含む必要

強靱な社会ネットワークインフラが求められており、生体認証技術やヒューリスティックウイルス検知技術、将来的には量子暗号を利用した技術の開発も必要

 また、少子高齢化に関しても触れ、「日常的な未病対策とICTによる医療システムの効率化が必要であり、健康社会を実現するためには安全な医療介護ネットワークの構築が必要である」などと述べた。

社会インフラシステム老朽化への対応

 一方で、「日本の社会インフラシステムは、高度成長期に構築されたものであり、建設後50年以上を経過する社会インフラが増加し、老朽化への対応が必要である」と指摘。「24時間監視によるめ安全性向上、DfM(デザイン・フォー・マニュファクチュアリング)による効率的なメンテナンスの実現が必要である。そのためには、検査や維持管理を統合管理するためのインフラ専用のM2Mセンサーネットワークが重要になる。電子情報産業は、これらの基盤となる技術の研究開発を行なっていくことになる」と語った。

建設後50年以上を経過する社会インフラが増加し、老朽化への対応が必要

センサーネットワークによる社会インフラのモニタリング

 さらに、東日本大震災以降、化石燃料の利用が増加しており、日本では、化石燃料輸入が増加。貿易赤字が拡大しており、8月は9603億円という最高の赤字額になっている点を指摘。「これは、企業の国際競争力にも影響している。省エネシステム利用拡大とエネルギー供給源の多様化によって課題を解決していく必要がある」とした。

 また、2020年に招致が決定した東京オリンピックに関しては、「産業競争力という点では、アベノミクスの第4の矢ともいえるもの。老朽化した首都圏の社会インフラ改善とともに、再生可能エネルギーを活用したゼロ・エミッションコミュニティを実現し、新たな社会インフラシステムを構築することで、東京オリンピックを契機とした都市競争力の強化が図れる」と語った。

映像関連技術の充実は、東京オリンピックに向けたひとつの鍵

 特に「映像関連技術の充実は、東京オリンピックに向けたひとつの鍵になる。2020年には4Kテレビの低価格化と、8Kテレビによるさらに高画質な映像を楽しんでもらえるほか、GPSやセンサー情報を活用して、競技場間のスムーズな移動を支援。さらに、大型の自由形状ディスプレイを活用した情報提供なども進められることになる」とした。

2020年には4Kテレビの低価格化と、8Kテレビによるさらに高画質な映像を楽しんでもらえる。GPSやセンサー情報を活用した競技場間の移動支援、、大型の自由形状ディスプレイを活用した情報提供なども進められるとした

 さらに、「首都圏の再開発が進む中で、MICE(Meeting、Incentive、Convention、Event/Exhibition)機能、国際観光機能を有した『おもてなしの街』として、ブランド確立に取り組む機会になる。また、電子情報産業は、オリンピック後の市場を見据えた街づくり、技術開発を行なう必要がある」と述べた。

 最後に佐々木副会長は、「先端技術や製品の開発、それらを統合することで、他国を凌駕する価値やサービスを提供。より効率的で、安全・安心な社会を実現するスマート・レジリエンスにより、電子情報産業のさらなる成長につなげたい」と締めくくった。


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