クレジットカード業界は、電子決済市場を支配してきた一大帝国だ。
日本のクレジットカード取扱高は、2011年時点で個人消費約280兆円のうち約34兆円。うち数パーセントの分割・リボ払い手数料、カード会員の年会費、カード読み取り機を置いた加盟店からの手数料などが、毎年数千億円規模でカード業界に流れ込んできた。
クレジットカードは特別な業界だと、電子決済研究所の多田羅政和代表は話す。日本経済がデフレ不況に苦しむ中、カード市場だけは成長の一途をたどってきたからだ。
「(カードショッピングの取扱高は)ずっと上がりつづけている。リーマンショックの影響も多少はあったが、過去20年間は右肩上がり。最近では公共料金をはじめ、カードで支払える場面が着実に増えている。電気代もガス代も病院の診療費用も、全部カードが使えるようになった」(多田羅代表)
だが意外にも、盤石だったはずの業界はいま岐路に立たされている。なぜか。
20年間勝ちっぱなしの帝国
会員数の飽和にぶちあたる
理由の1つは、カード会員数の飽和だ。
日本クレジット協会によれば、カードの発行枚数は2011年3月時点の3.2億枚で頭打ち。「業界としては発行枚数よりも取扱高のほうに意味があるが、成長が踊り場に来ていることの1つの表れではないか」(多田羅代表)
クレディセゾンの2012年度決算説明会資料によれば、2011年時点で日本の決済手段別シェアにクレジットカードが占める割合はわずか12%。米国25.6%、韓国57%と比べても低いままで、取扱高は上がるもの、限られた顧客を食い合う状態になっている。
また「日本には『クレジットカード=借金』の意識があり、普及がなかなか進まなかった」(大手カード会社関係者)という面も指摘されており、日本人の保守的な性格も新規顧客獲得の壁になっていた。
だが、クレジットカード業界の前に立ちふさがる最大の壁は別にある。
