桁数不足などの不安がない「無意コード」
このように桁数が足りなくなっても、コードの拡張を行えば対応できるかもしれない。ただしコード体系を変えるならば、当然システムも改修して対応しなければならない。そのコードが複数のシステムで使われているものであれば、コード体系の変更が影響を及ぼす範囲を調べるだけで膨大な作業となり、システム改修にも大きなコスト負担が生じることになるだろう。有意コードを利用し、それを前提としてシステムを構築すると、後々大きな負担を強いられる可能性があるわけだ。
他方、無意コードはそもそもコードに意味がないため、商品カテゴリや部門を表す桁数が足りなくなるなどの問題は起きない。したがってコードの拡張を考える必要はなく、コード変更に対応するためのシステム回収作業も不要である。もちろんカテゴリの絞り込みなどの処理では、前述のとおり有意コードに比べて処理コストが大きくなるが、十分なハードウェアの処理能力とネットワーク帯域が整備されている現在のシステム環境を考えると、桁数不足などの問題が起きないメリットの方が大きい。
また、昨今のERPパッケージでは、コード自体に意味を持たせるのではなく、それぞれのコードの属性として必要な情報を管理する形が一般的である。たとえば商品のカテゴリであれば、属性として用意されている「品目グループ」に指定すればよく、これを使って特定カテゴリの商品だけを絞り込むといったこともできる。このように見ていくと、現状では有意コードを利用するメリットはほとんどないと言えるだろう。
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このようにマスタ管理においては、データモデルの標準化とそれを運用するプロセスおよび体制の整備など、さまざまな要素を子細に検討していく必要がある。ただ、すでに既存のコードを使ってシステムを運用している場合、改めてコード体系をゼロベースで作り直すのは極めて困難である。影響範囲が極めて大きく、大規模なシステム改修となってしまうためだ。
そのため、BI/DWHを使って各システムの情報を統合的に分析する、あるいは利用しているマスタの異なるシステム同士を連携するといった場面では、マスタを変換して調整を図るサブシステムを新たに構築したり、あるいはそのための機能を搭載したパッケージであるMDMソリューションを活用するケースが多い。
後編では、このMDMソリューションの導入プロジェクトについて解説していこう。