通信機器向けのRangeley
先ほど少し出てきたRangeleyというコード名。構成はAvotonとほぼ同じであるが、こちらは通信機器向けの製品となっている。Avotonとの違いだが、RangeleyにはQAT(QuickAssist Technology)のアクセラレーターが搭載されている。
QuickAssist Technologyは端的に言えば一種のミドルウェアであり、暗号化アクセラレーターや通信アクセラレーターなどを包括的にサポートするAPIを提供してくれるものだ。
ミドルウェア、つまり実体としてはソフトウェアであるから、理論上はRangeleyでなくAvotonでも動作するはずであるが、これを高速化するとともに、いくつかのコプロセッサーを物理的に搭載したのがこのQATアクセラレーターというわけだ。
製品の扱いとしては、RangeleyがAvotonの派生型ということになっているが、実際のシリコンではRangeleyからQATアクセラレーターを無効化したのがAvotonらしい。というのもインテルの担当者が何度か「AvotonもRangeleyも同じシリコン」と言っていたからだ。とはいえ、Avotonを購入してRangeleyにできるわけではないし、普通は購入する手段もないと思う。
イーサネットはGbE×4と10GbE×1を選べる
PCI ExpressとSATAは標準的な構成
次にI/O周りを説明しよう。South ComplexではIOSF(Intel On-chip System Fabric)という独特なものが利用されている。IOSFそのものは、連載173回でClover Trailの構造を説明した際にも出てきたが、SoC内部のブロック同士を接続する高速なインターコネクトである。
ただCloverTrailの場合、周辺回路はOCPを使っていたのが、AvotonではすべてIOSFになっているのは、これらのブロックを全部インテルが自前で製造したからだと予想する。これは外部から買ってきていない、もしくはインターフェースは少なくとも自前で作ったのであろうという意味だ。
イーサネットも特徴で、4レーン構成となっており、GbE×4と10GbE×1のどちらかが選べるようになっている。小規模なサーバーであればGbE×4の構成でも足りるが、大規模サーバーの環境では10GbEを使う事も珍しくなくなっており、このあたりは使い方にあわせて変更が可能ということだ。
ちなみにPHYを外付けとしたのは、もちろん製造プロセスの問題もあるのだが、どんなイーサネットを使うのかが、特に10GbEでは環境によって異なるためで、インテルによれば10GBASE-X向けに複数のPHY(10GBASE-SRや10GBASE-CX4、10GSFP+CUなど)が接続可能で、10GBASE-Tも考慮しているという話であった。
PCIe/SATAに関してはごく標準的な構成となっている。SATAポートが合計で6つというのは、NASの用途を考えるとあからさまに少ないが、そうした用途では別途SATA/SASコントローラーを外付けにするため、SOHO向けの小規模なものならこれで足りるとみているようだ。
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