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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第128回

ホンモノを作った「ToneGarage」の開発チームインタビュー後編

真空管ならディスクリート回路、ひたすら真面目に作ったんです

2013年09月07日 12時00分更新

文● 四本淑三

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真空管 vs シミュレーター

―― 世間ではアンプシミュレーターという便利なものがあるわけですよね。KORGさんでもKEMPER※3を扱っていたり。そうするとギターアンプとマイクって、プロファイリングするためだけにあるんじゃないの? とまで言う人もいるわけですよね。すると、こういうギターアンプで鳴らすことを前提としたエフェクターは、どう捉え直すべきなんだろうと。

※4 プロファイリングアンプ。真空管アンプにテストトーンを送り、その出音をマイクで拾うことで、アンプやキャビネットの特性を模倣するという画期的製品。

 シミュレーターやプロファイリングアンプも、元はアナログのアンプをリファレンスにしているわけですよね。自分の感覚では、デジタルは、もっとデジタルでしか出せない音をやったほうが、楽器としては使えるものになるんじゃないかと思っています。アンプを持って行けないときに、シミュレーターを持って行くのは便利だからいいと思うんですよ。だけど、それがアナログを超えた、みたいなことを言うのは意味が無い気がします。

西堀 生ピアノが無くならないのと同じ話じゃないかと思います。考え方としてはアコースティック楽器に近い。逆に、デジタル楽器ならではという所の答えがまだ出せていないんじゃないかと思いますね。

遠山 最近、こういうストンプ系のエフェクターは見直されつつあって、売れてきているんです。逆にデジタルのマルチエフェクターの売上は落ちつつあって。

―― なんでそうなってるんですか?

小田 音楽の流行り廃りと同じで、その人達が目標にしているミュージシャンの使っている機材が、実際にそうだからでしょうね。あとはハイエンドなエフェクターでない限り、そんなに音がよくない。音の入口と出口にお金をかけられたらいいんですけど、マルチエフェクターの流れとして、多機能になりつつ、値段はどんどん安くという方向を追い求めた結果、みんな似たようなものになってしまったんじゃないですか。

―― 確かに便利なんだけど、飽きちゃうんですよね。

遠山 マルチエフェクターも昔に比べればDSPのパワーが広がってきているので、いい音が出るようにはなっているんですが、昔はそれほど多くのことはできなかった。その状況でメーカーは何を売ったかというと、単体のエフェクトのクオリティーを上げていくのではなく、ひとつのマルチエフェクターの中で何個のエフェクトを直列につなげられるか、そういう所に走っていった時期があったように思います。そのほうがお客さまにとってもお買い得感があった。でも、そのときはあまりいい音はしていなかったような気がします。

坂根 つなげればつなげるだけ、細くなっていってしまうんですよね。

小田 その一方で、音楽の流行り廃りで、骨太なロックで、ギターをアンプに直結する、それが漢っぽくてカッコいいと。数年前はアンプにブースターかませただけで直とか。そういう意味で今の時期にこれをやるのは正統派だと思います。

 シミュレーターを使っていたような人が、最近足元を見たら、いろんなエフェクターを並べているわけです。そのアナログエフェクターも選択肢がものすごく広がっていて。自分でボードを組むという部分まで楽しんでいるんだろうなと。

西堀 そういう流れって、ギターやエフェクターに限らない。デジタルの音楽をやっている人達も、アナログシンセの音にグッと来ているところがある。そのアナログの音をサンプリングして、デジタルなシステムで動かすんですけど、やっぱり出音はアナログがいいという人は増えている。特に海外、ヨーロッパあたりではそうですね。その流れに近いかもしれないですね。

―― アナログはアナログでやることはあります?

 いっぱいありますよ。

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