専用ドライバーと専用再生ソフトで安定した再生が可能
コルグ「DS-DAC-10」
まず紹介するのは、コルグの「DS-DAC-10」(実売価格4万8000円前後)。5万円を切る価格ながらも、最大192kHzまでのリニアPCM、そして2.8MHz/5.6MHzのDSD音源に対応する。
手のひらサイズのコンパクトさでUSBバスパワーで使えるというのも便利だ。アナログ信号出力とヘッドフォン出力を備えているので、コンパクトなヘッドフォンアンプとして手軽に使える。
ヘッドフォン出力のほか、背面にはデジタル出力とアナログ出力があるので、アクティブ型スピーカーをはじめ、一般的なオーディオ機器と接続可能。今回は、PCとUSB接続した後、自宅のシステムに接続してその音質を確認している。
ドライバーなどのインストールは、専用ドライバーと専用の音楽ソフト「AudioGate」が用意されている。このため、準備は各ソフトをインストールするだけで面倒な設定などが不要。DSD音源をトラブルなく再生できるのは実にありがたい。
さっそくその音を聴いてみよう。リニアPCM96kHzの女性ボーカルは声の厚みと適度な温度感のある音で、生々しい再現になる。わずかな吐息なども鮮明に聴こえるのでライブ感のある音に感じる。
192kHz収録のクラシックは、中低域が充実し安定感の高い演奏だ。個々の音の定位が明瞭で、オーケストラに近い位置で聴いているように感じる。オーケストラ全体を俯瞰するよりも、それぞれに音にぐっと迫ったような充実感のある音で、このあたりも現場の雰囲気やライブ感を感じる理由と言えそうだ。
DSDは2.8MHzのライブの生録音を聴いたが、スピーカーの間に浮かぶボーカルが実に生き生きと再現され、リアルな音に感じる。
強いて言うならば、ステレオ再生的なステージの立体感よりも、音の厚みや生き生きとした表情をより濃厚に再現するタイプ。ライブ演奏を聴くのが楽しいという人には好ましい音と言える。
しっとりときめの細かい音が美しい
ラトックシステム「RAL-DSDHA1」
ラトックシステムの「RAL-DSDHA1」(実売価格5万9000円前後)は、型番の通り、2.8MHzのDSD音源の再生に対応したモデル。リニアPCMは最大192kHzまで対応だ。幅は133mmで、こちらも十分にコンパクト。アナログ音声出力のほか、ヘッドフォン出力も備えている。
ドライバー類は専用のものが用意されているが、再生ソフトはWindowsならばFoobar2000、Macならば「Audirvana Plus」などでの再生が必要だ。
Foobar2000の場合、追加コンポーネントのダウンロードやインストールが必要になるが、取り扱い説明書に詳しいガイドが記載されているので、その通りに行なえば問題なく設定できる。ちなみに、WASAPI排他モードのための追加コンポーネントの方法なども載っているので、Foobar2000を初めて使う人でも安心だ。
まずはリニアPCMから聴いてみた。女性ボーカルは声がしっとりとした感触になり、落ち着いた雰囲気の演奏になる。声の余韻や伴奏のギターの音が空間に広がる様子もきめ細かく再現するなど、空間の描写が美しい。
クラシックでは、ホールの奥行きが見通しよく再現され、鮮明な音色とあいまって爽やかで品の良い演奏に感じられた。
低音をことさらに主張するタイプではないが、最低音域の伸びも十分だしタイトになりすぎず適度に弾力のある再現。迫力やスケール感はややおとなしいが、演奏が浮ついた感じにならず、低音楽器の力感も上品に描き出す。
DSD音源は、Foobar2000の設定で少々手間取った。これは本機の問題ではなく、一度PCを再起動したら問題なく再生ができた。DSD再生が可能なソフトもそれほど多くはないし、再生が可能でもUSB DACと動作保証されたものでないとうまく再生できないこともあるなど、まだ少々使いにくいところもあるので注意したい。
その音は、きちんと音の立つ実体感のある再現に加え、音の響きやかすかな吐息など、空気感の描写が見事だ。DSDらしい音の密度感やきめ細かな表情の豊かさをしっかりと聴かせてくれる。
コルグのDS-DAC10の生々しいライブ感と違って、こちらはある程度の距離をもって空間全体を描くタイプ。機器による音の違いはかなり大きいので、可能ならばいくつかの候補を選んでから、一度視聴してみるといいだろう。
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