四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第127回
VOXの新エフェクター「ToneGarage」シリーズの開発チームに聞く
「本物の真空管の音が出る」小型エフェクターが完成したワケ
2013年08月31日 12時00分更新
高電圧で駆動すると歪みにくくなるのがいい?
―― ところで200Vに昇圧する理由は何なんですか?
李 一般的な真空管のギターアンプは300から350Vくらいなんです。ある程度高い電圧じゃないと、真空管本来の動作ができないんです。
―― 電圧が低いと、何がダメなんですか?
遠山 電圧を落としていくと、まず真空管個別のバラつきが出ます。低い電圧に対して、真空管は特性を維持できないので、12Vとかで駆動すると、かたや1V出力、かたや3V出力とか、ゲインが滅茶苦茶になっていくんです。出てくる音も、良いものもあれば悪いものもあるという状態で、そこをいちいち調整しなければならない。でも100V以上かけてやると、大体特性の揃った真空管らしい音になってくるんです。
李 電圧を上げるほど歪まなくなるんですよ、逆に。
―― 困るじゃないですか、歪ませたいエフェクターなのに。
李 そうです。歪ませたいんだったら電圧は低い方がいい。でも、高電圧で動作して歪んだ音が欲しいから、高電圧を使いたいんです。
―― なるほど。高電圧で歪んだ音はどんな風にいいんですか?
李 言葉で言うと「ガーン!」って感じです。
(全員爆笑)
李 つまり無理やり歪ませることになるんですね。無理やり歪ませるために、さっきの20Vという高い電圧を真空管の前にも用意しているんです。
―― 歪みにくい真空管に大入力を入れてやったほうが、音がいいと。
李 そうです、その音が欲しかったんです。
遠山 実際、他のメーカーさんで低い電圧で動作する真空管の製品もあると思うので、比べてもらえばすぐに分かります。300Vくらいかければ、真空管のギターアンプと同じくらいの特性が取れるんですけど、電池の寿命が落ちてしまうので、その間を取って200Vにしたんです。
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