デバイス&サービスカンパニーへ
「チャレンジャー」としてのマイクロソフト
バルマー氏は、我々が感じる以上に「変革」に取り組んできた経営者である。
だからこそ今、CEOの退任を決意したのではないだろうか。
ここ数ヵ月のバルマー氏の発言を聞いていると、そんな想いを感じるような発言が相次いでいた。
例えば、バルマー氏は最近の発言で、1980年にマイクロソフトに入社した時のことに触れながら、「私は、マイクロソフトに入社する際に、両親にソフトウェアの会社に入社すると話した。これからはソフトウェアの会社ではなくなる。ソフトウェアの価値は今でも重要であるが、これからのマイクロソフトは、デバイス&サービスカンパニーにならなくてはならない」といったことを繰り返していたのも、そのひとつだ。
これは、バルマー氏が入社したソフトウェア会社のマイクロソフトが、今こそ変わる時期に突入したことを示すものだ。
そして、ここ数ヵ月に渡り、バルマー氏が「チャレンジャー」という言葉を何度も使っていたのも印象的だ。
どんな状況でも自らの強みを訴求し、市場のリーダーであることを標榜し続けてきたバルマー氏が、「チャレンジャー」という言葉を使っていたのはこれまでに例がなかったことだ。
チャレンジャーとする領域は、アップルやAndroid陣営に先行された「タブレット」や「スマートフォン」である。この市場に向けて、チャレンジャーとしてのマイクロソフトの挑戦が始まっている。
マイクロソフトの変革のキーワードは、バルマー氏が示す「デバイス&サービスカンパニー」であり、代表的な取り組みが自社ブランドのタブレット「Surface」となる。
マイクロソフトは、CEOさえも変わらなくてはならない
ある社内関係者は、「バルマーCEOは、6月に全世界の開発者向けに開催したBuildでの基調講演、7月に行なわれた全世界のパートナーを対象にしたイベントでの基調講演、そして、同じく7月に行なわれた新たなシニアエグゼクティブによる社員向けのタウンミーティング、全世界の社員を対象にしたMGXといった重要なイベントにおいて、丁寧すぎるといえるほど、デバイス&サービスカンパニーの意味について語っていた」と指摘する。
マイクロソフトの将来の道筋を明確に示し、そこに向けた変革に乗り出すための姿勢を説いたのが、この数ヵ月のバルマー氏だった。
新たなシニアリーダーシップチームの編成と、大規模な組織変更という相次ぐ取り組みは、社内の意識改革を促進するための荒療治でもある。そして、その仕上げが、自らの退任ということになる。
バルマー氏は、“マイクロソフトは、CEOさえも変わらなくてはならない”ことを自ら示し、次世代経営者にバトンを渡すことになる。
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