チェスがそうであるように、いつかはコンピューターが人間を上回ることが明白であっても、それでもやはり対決の行方に大きな注目と話題を集めた、人間 vs コンピューターによる将棋対決「電王戦」。
今春に行なわれた「第2回将棋電王戦」では、なんとプロ棋士の1勝3敗1分けで負け越し。しかも最終局ではプロ棋界の最高峰リーグであるA級に所属する三浦弘行九段(当時八段)までもが敗北するという結果に終わった。
第3回ではハード環境を指定
プロ棋士側もしっかり準備して対局に臨める
そんな将棋電王戦の次回が来春開催で早くも決定! 大会を主催するドワンゴと日本将棋連盟によって、大会概要が発表された。
第3回将棋電王戦で注目されるのは、ハードウェアの指定が行なわれること、大会に出場するハードとソフトは、出場プロ棋士にも事前に同じものが提供され練習対局が可能、という2点の新ルールだ。
前述の三浦九段に勝利を収めたGPS将棋は、東京大学のコンピュータールームにある数百台のPCをクラスタリング(コンピューターを繋げて利用すること)によって、高い処理性能を実現し、手の先読みをしていることが報道されている。
それに対し、今回はパーツショップ「ドスパラ」で知られる、株式会社サードウェーブデジノスの協力でハイスペックPCを用意し、その上で動作するソフトウェアと人間が争う形になる。なお、主催者が発表したルールブックによると、使用するPCは6コア12スレッドのインテル製CPU搭載機で、16GBメモリー、1TB HDDとなっている(OSは変更可能)。
また、前回大会では人間の棋士では読みの対象からは除外されてしまうような、コンピューター側の意外な指し手にトップ棋士が戸惑うという場面もあっただけに、練習対局でプロ側がしっかり対策を練ってくる可能性は高そうだ。
第3回大会のコンピューター陣営は、ある意味“現時点で最強”とは言えないわけで、そのことを残念と見る向きもあるだろう。しかし、大規模なクラスタリングによって処理性能を高めたコンピューターは、トッププロ棋士とほぼ互角(もしくは上回る)の実力を持っていることはすでに証明済みと言える。そこでコンピューター側に一定の制約を課してでも、プロ棋士側に真の実力を発揮しやすい状況を作ることで、よりハイレベルで緊迫した戦いが期待できる。
なお、コンピューター側の出場プログラムは、11月2日から開催の「将棋電王トーナメント」(賞金総額500万円)によって決定される。ハード、ソフトともに電王戦とまったく同じものが用いることが前提だ。
出場プロ棋士については、今回は屋敷伸之九段のみが発表された。A級九段の実力者であり、「借りを返すというようなことを求められているとは思う」などと語りながらも、プレッシャーなどは一切見せない飄々っぷり。ただし、将棋界における“忍者屋敷”のあだ名どおりに内心は計り知れない部分もあるだけに、とにかく実際の対局に期待である。
人間とコンピューターがタッグを組んで対局
8月31日にトーナメントが開催!
なお、来春の本大会に向けて、各種イベントなども予定されており、まずは8月31日(日)に「電王戦タッグマッチ」が行なわれる。
これは、第2回将棋電王戦で対決をしたプロ棋士とコンピューターがタッグを組み、トーナメントで対決するというものだ。チェスの世界では「アドバンスチェス」(英語版Wikipedia)という名称で、プレーヤーがコンピューターを参照しながら進める競技も提唱されている。将棋のプロ棋士は、終盤の詰みの場面だけでコンピューターに頼るのか、序盤・中盤でも利用するのか、こちらの対局にも注目である(ニコニコ動画で中継予定)。