このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

将来は一家に1台ヘルスデバイスの時代?

2013年08月19日 16時01分更新

文● 今村知子(Tomoko Imamura)/アスキークラウド編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 スキャナドゥー・スカウトは現在、まだプロトタイプの段階だ。クラウドファンディングで多くの人に出資を呼びかけたのも、たくさんの使用者からのデータを集めることで、FDA(米国食品医薬品局)の承認審査を通す目的があった。FDAで承認されれば、スキャナドゥー・スカウトは医療機器として使用できるからだ。

 一方で、日本ではまだそれほど本格的なヘルスデバイス市場は育っていない。日本で発売時に品切れとなるほど人気を呼んだジョウボーン・アップや、SoftBank HealthCareで提供されるリストバンド型活動量計「Fitbit Flex」でも、歩数や移動距離、消費カロリー、睡眠情報がわかる程度で、医療機器並みの生体情報までは計測・記録できない。

「日本では病院に行けば精度の高い医療機器が使えますからね。米国ではちょっと体調がおかしいなと思っても、なるべく自宅で調べたい。本人が正確に数値の判断ができなくても、保険会社に見せて医療費の支払いを受けるなど、数値を出せるヘルスデバイスの存在は大事なんです」(堀永氏)。日米の医療体制の違いが、ヘルスデバイスへのニーズの差につながっているようだ。

医療機器レベルの米国製に対し、アクセサリー感覚の日本のデバイス

 しかし、逆に言えば「日本のヘルスデバイスはどこも同じようなデータしか取れない、つまらない市場」(堀永氏)とも言える。米国では圧倒的な人気のある「Nike+ Fuelband」(ナイキプラス・フューエルバンド)もまだ日本では未発売だが、「3つの加速度センサーから独自に活動量を測り、ディスプレイ表示してくれる。走るモチベーションを上げることでナイキの靴を販売するという、自社のビジネスに結びついているし、アクセサリー的な日本の商品より実用的。これが日本に来たら、市場を席巻するのでは」という。

「ナイキフューエル」という新しい単位で活動量を測定し、目標達成に近づくにつれLEDライトの色を変化させることでモチベーションをアップさせる「ナイキプラス・フューエルバンド」。日本での発売は今秋と言われている。

 確かに日本のヘルスデバイスや各種サービスは、万歩計や体温計の記録をクラウドで管理できるようになった程度で、病院や専用の施設で得られるような精度の情報は望むべくもない。結局、流行りのジョウボーン・アップを手に入れたものの、目覚まし代わりになっている人も多いのではないだろうか。

 健康に関する情報は、老若男女誰にでも関わりがあるため、今後は携帯事業者をはじめ、大手電機メーカーからベンチャーまであらゆる企業がより本格的に参入を図ると考えられる。今のところはまだ様子見程度と見受けられる日本市場だが、今後国が本腰を入れて医療費削減などに手をつけたら、米国同様、切実なニーズが生まれ、「一家に1台ヘルスデバイス」も当たり前になるのかもしれない。


前へ 1 2 次へ

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中