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なれる!SE 間違いだらけの?IT用語辞典(中二版) 第26回

オーウェルもびっくりな、国民監視システムのようなIT用語

2013年08月15日 18時00分更新

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回答編


オートノマスシステム(AS)はネットワーク用語ね。単一の経路制御ポリシーを有する組織、または複数組織の集合体のこと。


単一の経路制御……ポリシー?


たとえばISP──プロバイダーはASね。大学や政府機関もそれぞれASとして成立しうる。で、プロバイダー内の通信はそこの管理者が自由にコントロールできるでしょ? 他組織のポリシーに縛られることはない。


なるほど……自律システム……自治圏みたいな感じですね。


まさにそう。ネットワーク上の自治圏。で、基本的にインターネットのルーティングはAS間の繋がりで制御される。


AS間の繋がりですか?


前にディスタンスベクターの話をしたでしょ。目的ネットワークまでの距離を通過するルータ……通信機器の数で表すやつ。


ああ、少ないホップ数(通過機器数)がよい経路と見なすやつですね。


そう。仮にあれをインターネットでやったらどう? 何万台って通信機器の繋がりを全てホップ数で表現しようとしたら。


大変なことになりそうですね。……ネットワークAまでは数十ホップ、Bまでは百ホップ以上とか。


でしょ。だからインターネット上の距離は通過機器数ではなく、通過ASの数で表す。各組織にユニークな数字を割り当ててその並びで目的地までの経路を記述するの。


通過組織数が少ない方をよい経路と見なすと?


まぁそう単純でもないんだけどね。もちろん目的地までのASが少ない経路を優先することもできるわよ。ディスタンス(距離)ではなくASのパス(並び)を使用するから、ついた名前がパスベクトル型アルゴリズム。


ううむ……なんか難しいですが、つまり大規模ネットワークを運用するためにあるまとまりの経路をASに集約する。で、そのAS単位に通信をコントロールしようってことですか?


そう、まさしく。なかなか良い勘してるじゃない。ちなみにこの時使われるルーティングプロトコルがBGP


BGP……第五回でちょっと出てきましたね。


色々知識が繋がってきてめでたい限りね。いい機会だしこのままインターネットルーティングの基礎をレクチャーしてあげよっか? IX(*2)とかトランジット(*3)とか、あんた普段触れるチャンスないでしょ。史上最大の通信インフラがどういう仕組みで動いているか、楽しいわよー、化け物みたいな機械や設備がいっぱいで。


おおお、面白そうですね。是非是非。


(ニヤリ)
じゃあ今からやっちゃいましょうか。桜坂、会議室おさえといて。


はーい。


おかしいなぁ……有休申請の期限、今日の定時までって伝えてあったはずだけど、誰からも連絡こない。……ま、いいか。じゃあ作業シフトに桜坂君を加えてと。……お盆休みどまんなか! よろしく!

(ターンと軽快な打鍵音。フェイドアウト)


(*2) インターネットエクスチェンジ。プロバイダなどの接続点
(*3) 他ASへの接続を有償で中継すること


【解説】

オートノマスシステム
単一の経路制御ポリシーを有する組織、または複数グループの集合体のこと。一般的にはASの略称で呼ばれる。各ASはユニークな番号を持ち、インターネット上の通信制御はその番号単位でコントロールされる。通常、BGPというルーティングプロトコルとセットで使われる。

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