EnhancedSuperSpeed以外にもある
USB 3.1の仕様
On-The-Goというのは、デバイス同士で直接USB経由でやり取りするというものだ。例えば最近はPCを使わなくても、デジカメとプリンターをUSBケーブルで繋いで直接印刷できるのが普通になってきた。
ただPCから見れば、デジカメもプリンターもUSBデバイスであり、実際USBホスト機能はどちらも持ち合わせていない。本来USBではホストがデバイスに対して要求を出して通信が行なわれるが、組み込み向け用途ではデバイス同士で通信できた方が便利なケースが多く、こうした動作をOn-The-Goと呼ぶ。On-The-GoそのものはUSB 1.1/2.0ですでに存在しており、これをUSB 3.0に対応させたのが主要な特徴である。
2つ目のUSB Power Deliveryは、USBポート経由で最大100Wの電力を供給できるようにする仕組みだ。と言っても5Vのまま100Wだと電流が20Aにもなってしまい、非常に危険である。
そこでUSB Power Delivery Specificationでは、ホストとハブ、デバイスが通信しながら、Profile 1(5V@2A)~Profile5(20V@5A)まで段階的に電圧と電流を引き上げるような仕組みとなっている。
いきなり20Vをかけると、既存の5Vデバイスが燃えかねないので、それぞれの機器が対応できる電圧と必要な電流をきちんと確認してから供給する仕組みとなっている。
3つ目のInter-Chip Supplement to USBが一番なじみが少ないかもしれない。例えば携帯電話の場合、内部的にはWi-FiやBluetoothなどのトランシーバはUSBで接続されている。ところがこうした用途において、既存のUSBの信号レベルや速度はオーバースペックである。
元々USBは数メートルのケーブルを経由して接続することを前提に5Vの信号電圧をサポートしているが、携帯電話の基板の上で繋ぐだけならもっと信号レベルは低くても問題ない。Wi-Fiでもせいぜい100Mbps程度の速度なので、5GbpsのUSB 3.0はもとより480MbpsのUSB 2.0でもやや高速すぎる。
そこで、USB 3.0のPHYをPCI ExpressベースのものからMIPI(Mobile Industry Processor Interface)と呼ばれる携帯電話用の低消費電力で速度を自由に変更できるPHYに置き換えたいという要望が以前から出ており、これに対応したものである。
これはSSIC(Super Speed Inter-Chip)と呼ばれており、上の図がその模式図となる。ご覧の通り変更は物理層に限られており、論理層は既存のUSB 3.0そのままなので、ソフトウェアなどの変更は一切なしに利用できる仕組みである。
今回はUSB 3.1の仕様について説明した。次回はSATA 3.2について説明したい。
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