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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第26回

米西海岸で日本のポップカルチャーの祭典「J-POP Summit Festival 2013」

2013年08月11日 15時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura

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TOYOTA・Studio 4℃、ANAのPESもアピール

 出展していた企業は、後に紹介するセガの初音ミクと、トヨタの「PES」(Peace Eco Smile)でした。今回のPESのブースにはANAも参加していました。PESはトヨタのグローバルブランドを伝えるために設立された、トヨタ・モーター・セールス&マーケティングがスタートしたプロジェクトで、Studio 4℃とのコラボレーションによる高品質のアニメーションを通じて、コミュニケーションを取ろうという継続的な取り組みになります。

 会場では、「TOYOTA x Studio 4C meets ANA」のテントが設置され、アニメーション上映や、小原秀一監督のサイン会、作品で楽曲を歌ったLovendoR、声優ユニットSweetyのライブなどが行われました。

PESでアニメーションを制作する小原秀一監督が、特設テントでトークショーやサインに応じた。実際のアニメーションを見ながら、その制作者に会える点、またトヨタがクリエイションをサポートしている点が興味を引いていた

 ブースで上映されていたサインフランシスコを訪れていた小原氏の作品「My line」は、トヨタの86やカムリが作中で颯爽と駆け抜けていくシーンが印象的に描かれています。担当者によると、ポップカルチャーの生かして日本国内外に向けたブランディングの取り組みとして、クルマを中心とした様々なコラボレーションを行っているとのこと。



 アニメーションの中にたびたび出てくるなすのキャラクター「NaSuBi」の的当てや風船割りなど、日本のお祭りでおなじみの風景も展開されており、日本のポップカルチャー、伝統的な文化を自在に生かした企画が人気を集めていました。

アメリカに広まる日本文化のニューウェーブは
初音ミクと日本酒、そして「お~いお茶」?

 さて、J-POP Summitは「kawaii」を中心に展開しており、ゲームやアニメにフォーカスが当たっていないと紹介しましたが、これらのジャンル以外の新しい軸を模索する動きも見られました。その一つは、初音ミクです。

 セガがプレイステーション3向けに8月にリリースする初音ミクのダンスゲーム「Hatsune Miku: Project Diva F」のデモブースを出したり、ステージで初音ミクの楽曲に合わせたダンスコンテストを開催したり、「kawaii」に次いで露出の多いブランドになっていました。初音ミクが米国で広く紹介されたのは、昨年トヨタが米国向けに放映したカローラのテレビCMでした。



 セガのブースでは、カリフォルニア州南部のサンディエゴで前週に行われたComicConから、初音ミクのコスプレも参戦し、楽曲制作のプラットホームとしてだけでなく、ゲームやダンス、キャラクターなどの展開が見られるかもしれません。

セガのテントでは、初音ミクのコスプレも登場し、PlayStation 3用ゲーム「Hatsune Miku: Project Diva F」のデモプレイを楽しむことができた

 そしてもうひとつ。

 日本人には当たり前の飲み物であるペットボトルの緑茶も、ニューウェーブとして広まっています。J-POP Summitでは「Sake」として、アメリカでもすっかり人気の日本酒の試飲コーナーとともに、伊藤園の「お~いお茶」がボトルをかたどった巨大なパネルを飾って試飲と即売を行なっていました。

 テレビ番組のドキュメンタリーにもなりましたが、米国の伊藤園は、サンフランシスコやシリコンバレーのテクノロジー企業の冷蔵庫に積極的にペットボトルのお茶を置いていき、健康志向のカリフォルニアの人に甘くないお茶の味を伝えています。「Teas' Tea」ブランドでの、緑茶以外のお茶も投入しています。

 Ito En North Americaのセールス&マーケティングマネージャーを努める角野賢一氏は、シリコンバレーへの浸透のために、テクノロジー企業のエンジニアへのアプローチという戦略を採ったそうです。

 これに加えて、今回のようなイベントや日本食スーパーの店頭で手にとってもらったり、和食の弁当と合わせて楽しんでもらったり、日本でいかにボトルのお茶が楽しまれているかを実直に再現しているとのことです。

 「無糖のお茶=伊藤園(ITO EN)」というブランドの確立を狙う中で得た手応えから、急須のお茶の楽しみを西海岸に広められるのではないかと展望を語って下さいました。店頭で急須のお茶を振る舞うと、道具に興味を示して茶葉を買っていく人も見られるそうです。

 むやみに製品をローカライズするのではなく、そのままの製品をどのように楽しんでもらうか。その先に、日本の文化を身につけ、楽しんでもらう段階が待っているのではないかと思いました。

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