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富士通のUNIXサーバー、かく戦えり 第3回

オープンソースはM10に載らないのか?

富士通とオラクルが目指すSPARC/UNIXサーバーの未来

2013年08月15日 08時00分更新

文● 渡邉利和 写真●曽根田元

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富士通のSPARCサーバー、次世代機はこうなる

――次世代機のお話が出ましたので、富士通のSPARCサーバーの今後について教えてください。

 M10の次世代モデルは現行製品のエンハンスモデルという位置づけで、アーキテクチャが更新されるのはさらにその次の世代の予定です。次世代モデルでは、クロック周波数の向上、コア数増加時の性能向上を実現する新ファンクションの追加、インターコネクトの性能向上が予定されています。その次の世代では、プロセッサが20nmプロセスに移行する予定です。

 実は京の次世代機の計画もあります。現在の京の10ペタフロップスから、数十ペタフロップスへと性能アップする計画です。一気にエクサフロップス(=1000ペタフロップス)レベルに行くのは難しいので、その前にワンステップ挟むという考えですね。さまざまな開発を同時進行することになりますが、バラバラに進めていては効率が悪いので、いかに共通性を高めて開発を効率化するかが重要になります。もっとも、共通化や効率化ばかりを意識してしまうと“帯に短したすきに長し”ということになりかねないので、メリハリを効かせて開発を進めることがポイントです。

 プロセッサ単体の性能を見ると、京に搭載された「SPARC64 VIIIfx」は8コア、クロック周波数2GHzで、45nmプロセスを採用しています。次に、京の技術を発展させた商用スーパーコンピュータ「PRIMEHPC FX10」※10の「SPARC64 IXfx」は16コア、クロック周波数1.85GHz、40nmプロセスでした。これに対し、M10ではSPARC64 VIIIfxやIXfxなどのHPC系プロセッサからベクトル演算機構などを移植する一方、プロセスは28nmにシュリンク(微細化)した結果、クロック周波数は3GHzに向上しています。現時点のプロセッサ処理性能で比較すれば、実はM10が最速なのです。

 では、京のプロセッサをM10に置き換えればさらに高速なスーパーコンピュータになるかというと、そう単純な話ではありません。HPC系プロセッサでは消費電力の低減に相当な配慮をしているためです。スーパーコンピュータは多数並列化することが前提なので、プロセッサ単体での性能向上よりも、多数集積した場合の総消費電力軽減などのほうが重視されます。このように、用途によって重視すべき性能は異なるので、それぞれに最適なプロセッサを設計していく必要があるわけです。

※10 PRIMEHPC FX10:2011年11月に発表された富士通のスーパーコンピュータ。京の技術をさらに向上/発展させた商用システム。最大構成時には、9万8304ノード(1,024ラック)、総メモリ容量6PB(ペタバイト)、演算性能は23.2ペタフロップス、という規模まで拡張可能。プロセッサはSPARC64 IXfx。

富士通のスーパーコンピュータ「PRIMEHPC FX10」

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