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富士通のUNIXサーバー、かく戦えり第1回

UNIXサーバー、プロセッサ事業の歴史と変遷を豊木則行氏に聞く

富士通はSPARC/UNIXサーバーをどう作ってきたか

2013年08月13日 08時00分更新

文● 渡邉利和 写真●曽根田元

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 世界のスーパーコンピュータ処理性能ランキング「TOP500」で上位に食い込み、国内ではトップを走る理化学研究所の「京」。このマシンを支えているのは、SPARC64プロセッサを始めとする富士通のハードウェア技術である。こうした世界最高レベルのスーパーコンピュータで使われるプロセッサを自国で設計/製造できるのは、現状では米国か日本に限られることもあり、プロセッサ開発を巡る富士通の動向は注目される。

 富士通のSPARC/UNIXサーバー事業はどのような歴史を歩んできたのか、そしてこれからどう発展していくのか。それを知る富士通 執行役員常務 サービスプラットフォーム部門 副部門長の豊木則行氏に話を聞いた。

富士通 執行役員常務 サービスプラットフォーム部門 副部門長の豊木則行氏。富士通のサーバービジネスの歴史を知る人物である

草創期の富士通UNIXビジネス

 1980年代、プロプライエタリなメインフレームしか存在しなかったコンピュータの世界に「オープンシステム」と呼ばれる新領域が出現し、まず実用化されたのがUNIXでした。学術研究機関などのワークステーション向けOSとしてスタートし、プロセッサの性能向上に伴ってやがてサーバー領域でも使われるようになり、現在に至ります。

 製品が出始めたころのUNIXは、信頼性の面でメインフレームに劣っていましたが、もともと学術研究の現場で利用されていただけあって数値計算性能などは良好でした。そのため、当初から「劣っている部分を補強していけば、それなりのシステムに成長させることができるだろう」という展望は持っていました。

 そうは言いながらも、メインフレームからUNIXへと一気に移行するという考えはさすがになく、まずはワークステーションでUNIXを使うところから始まったわけです。富士通も、UNIX事業の最初期である1991年には、サン・マイクロシステムズから調達したSPARCプロセッサと自社製のOS「UXP/DS」を組み合わせた「DS/90 7000シリーズ」※1というワークステーションを製品化しました。

 UXP/DSはUNIXベースの独自OSだったのですが、「UNIX=オープン」という認識のお客様にはプロプライエタリなOSを採用したことへの不満もあったようですし、ISV/IHV(独立系ソフトウェア/ハードウェア・ベンダー)を巻き込むかたちでのエコシステム構築が難しいという問題もありました。そこである時期に「OSにSolarisを採用する」という決断を下し、サンとの提携に基づくUNIX事業を展開していきます。

 ここでSolarisを選んだ理由は、当時Solarisが圧倒的なシェアを獲得しており、そのために膨大な数のISV/IHVもサポートしていたためです。ユーザーの利便性という見地からは最適な選択だったと考えています。

 その後、UNIX市場がさらに規模を拡大し、製品の成熟も進んだ結果、それまでメインフレームが担ってきた業務のある程度の部分はUNIXでもカバーできるようになりました。富士通も「やはりUNIX自体の強化が必要である」と認識し、それ以後ハードウェア/ソフトウェアの両面から研究開発に取り組むことになります。

※1 DS/90 7000シリーズ:1991年9月発表。ワークステーションモデルとサーバーモデルが存在した。SPARCプロセッサを搭載し、OSはUNIX System V Release4に準拠した富士通独自のUXP/DS。1997年に販売を終了した。

富士通の独自OSを採用したUNIXサーバ「DS/90 7900E」

プロセッサの独自開発とUNIXサーバーの発展

 先ほど触れたとおり、富士通は当初、サンからSPARCプロセッサを調達していました。その後、独自のハードウェア開発に着手し、富士通製の64ビットプロセッサであるSPARC64が登場したのは1995年です。

 新しいハードウェアを動かすためには、OSコードの変更も必要になります。基本的にSolarisはサンの知的資産でしたが、富士通のハードウェアに合わせた変更が必要な部分もあり、その部分はこちらで開発したコードをサンのコードにマージする作業も行っていました。つまり、OSについても富士通がまったく何もしなかったわけではありません。

 富士通製「SPARC64 GP」プロセッサを搭載し、OSにSolarisを採用したUNIXサーバーとして、1999年に富士通から発売されたのが「GP7000Fファミリー」※2です。

 GP7000Fファミリー発表と同じ1999年、富士通はドイツのシーメンスと合弁会社(富士通・シーメンス・コンピュータズ)を設立しました。同社の事業開始に当たっては、シーメンス側の既存資産を活用することを目的に、UNIXマシンからIA/Windowsマシンまで幅広いオープンシステムのラインアップ拡充に取り組んでいく体制になりました。UNIXに関して言うと、当時シーメンスではMIPSアーキテクチャ「Rシリーズ」プロセッサを使った独自のUNIXシステムを手がけていましたが、この事業を段階的に縮小し、SPARC/Solarisベースのシステムに一本化していく方針が固まりました。

※2 GP7000Fファミリー:1999年7月発表。富士通製の64ビットプロセッサ「SPARC64-GP」を搭載、OSはSolaris。GP7000Fモデル2000はクロスバースイッチを介して最大64プロセッサを接続するSMPサーバーで、Solaris 7を採用していた。
 なお前出のDS/90 7000シリーズとGP7000Fファミリーの間に、1997年発表の「GRANDPOWER7000シリーズ」も存在する。プロセッサにサン製の「HyperSPARC」「UltraSPARC」を搭載、OSは富士通のUXP/DSを採用した、DS/90の後継と位置づけられるシリーズだ。GP7000Fという名称は、このGRANDPOWER7000から受け継がれたものと考えられる。

Solaris採用の「GP7000Fモデル2000」。最大64プロセッサを搭載可能

(次ページ、サンの失速と「SPARC Enterprise」の共同開発)

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