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直販市場のパイオニアに月刊アスキー遠藤元編集長が直撃取材!

20周年を迎える「エプソンダイレクト」の変わらぬこだわり

2013年08月30日 11時00分更新

文● 真島 颯一郎 写真●曾根田 元

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顧客との関係を大切にしたい

遠藤 最後に、品質と並んで御社のもうひとつのウリである信頼についてお聞かせ願えますか。特にサポートが手厚く、修理が早いとユーザーからも評判ですが、どこに気を配っておられるのでしょうか。

河合氏 私たちが一番気にしているのは“お客様の抵抗感に繋がるところを縮める”ということです。たとえば、当社は納期がたったの2日で早いとは言っていますけど、お客様からすれば注文してから2日経たないと商品が手元に届かないわけです。そういう抵抗を感じるようなところをなくしていきたいと考えています。修理をできる限り速くするために、マシンの設計だけでなく、販売管理、社内の仕組みづくりのレベルから整えています。そういうことが、信頼に繋がっていくのですね。

遠藤 お客様を意識して、喜んでもらえるような取り組みをしている。お客様にフォーカスした経営をしている、ということでしょうか。

河合氏 そうですね。もちろん、当社としては自社の製品には自信があります。ですが、よい商品を作ってたくさん売ればそれで終わりということにはしたくないんです。特に商品に関しては、私どものこだわりだけで押し切るのは、お客様には受け入れられない場合もありますから。一方で、品質や信頼、サポートに関してはすべて同じようにやっていこうという一貫したこだわりを持っています。

遠藤 なんだか保険業みたいな感じですね。そのノウハウを生かして、何かほかのビジネスもやれるんじゃないですか。お客様と繋がっているというところが、これからの日本の企業にとって、すごく大切なことになってきていますよね。御社のようにファンのついている企業は、特にそのよい関係を維持していくことが、すなわち企業活動そのものになる。

河合氏 そうですね。私たちはお客様とはその場限りではなく、長いおつきあいをしたいと考えてやってきました。10周年、15周年の折に出した記念モデルには、長年の感謝も込められているんです。いま、20周年記念モデルも検討中です。ぜひ、ご期待いただければと思います。

15周年記念モデルの蒔絵パソコン(左)、10周年記念モデルの漆塗りパソコン(中央)、初号機と呼ばれるAT-1000

遠藤 20周年モデルのアイディアは、すでに何かお考えですか? ここだけの話で、ヒントだけでもいただけるとうれしいのですが。

溝口氏 実はまだ検討中の段階なんですよ。逆に、何か良いアイディア、ありませんか?

遠藤 それじゃあ、限定でケースだけを販売するなんて、どうですかね?(笑)。

溝口氏 検討させてください(苦笑)。

こちらは現行製品のラインナップ。フラッグシップの「Endeavor Pro5500」(左)、コンパクトモデルの「Endeavor ST160E」(中央手前)、一体型モデルの「Endeavor PT100E」(右)が並ぶ

~ インタビューを終えて ~

1987年10月号の月刊アスキーでは、PC/AT互換機の特集を掲載していた。記事中では、当時のPCの市場規模やPC/AT互換機の代表的なメーカーなどが、挙げられている

 私が、エプソンダイレクトを訪問したのは2回目で、前回は2001年秋のことである。ダイレクト(直販)といっても、企業向け、学校法人向けも展開しており、単なる価格競争には参加しない。また、自社ならではの設計、たとえば一部の部品を特別な位置に配置することでBTOを容易にする設計など“違い”というものを認識させてくれた。当時、ユーザーの利用環境をカルテのように把握していて、すみやかで確実なサポートができる点も売りにしていた。

 米国のPC業界では、80年代後半に、PC/AT互換機がクローズアップされて一気に市場ができあがった。1987年に『月刊アスキー』でもPC/AT特集を組んだが、その記事中に、エプソンの“Equity”シリーズが、シェア上位に食い込んでいるという話がでてくる(その後、諸般の事情でインタビュー中にもあるように国内事業へと転換するわけだが)。

 直販ならではの、価格だけでなく、性能、信頼という部分を重視している同社の姿勢は、こうした道のりを経てきたメーカーの意地なのだろう。2001年の段階でも、3台目で5年以上のユーザーが中心。1年目よりも10年目のユーザーが多いと伺った。同社は、若いユーザーも取り込みたいはずだからこれは強調しないかもしれない。しかし、実用性を重視する“分かった”ユーザーが使っているということだ。そうしたことを、再確認できるインタビューだった。

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