初期の出資者が割安なシステムは
そもそも失敗?
このデータをさらに分析したのが、コンサルのOpenAnalyticsだ。OpenAnalyticsは、Indiegogoのライバルのクラウドソーシングサイト「Kickstarter」のデータを基に計算した結果、Ubuntu Edgeの調達金額は1800万〜2200万ドルの範囲と予想している。
Kickstarterでの分析によると、多くのクラウドソーシングプロジェクトがスタート時に大きく盛り上がり、中間に“デッドゾーン”という動きの少ない時期があり、最後にもう一度活発になるという、ヤマが2回ある曲線を描くという。OpenAnalyticsはこのパータンを応用し、1800万ドル〜2200万ドルというUbuntu Edgeの予想調達額を割り出している。
OpenAnalyticsは合わせて、Canonicalの用意した価格構造についても疑問を呈している。上に記したように、Canonicalのモデルでは初日の600ドルをはじめ、価格が低い枠がいっぱいになると価格が上がる。つまり出資者が増えて、後に出資するほどだんだん金額が高くなることになる。最初に出資する人が熱心なファンやハイテクガジェット通で、どちらかというと高い金額をいとわない層なのに、最初が安くて後になるほど高くなるという構造なのだ。また、端末購入権以外にインセンティブがほとんどない点も課題としている。
調達に失敗すればUbuntu Edgeはキャンセル
もし調達プロジェクトが成功すれば、キャリアやメーカーを介さずにCanonicalが直接ユーザーに製品を届けるという試みが成功することになる。失敗に終わったらどうするのか……Canonicalは最初から一貫して、目標額に達しない場合はキャンセルと語っている。つまり製品は登場せず(CanonicalはUbuntu Edgeの商標登録を行っているが)、CanonicalはCAGやメーカーを通じてUbuntuの商用端末のローンチにフォーカスすることになる。
新興OSの中では「Sailfish OS」のJolla、Firefox系のGeeksphoneなどがユーザーに直接販売するモデルをとっているが、Canonicalはハードウェアに参入するつもりはないと明確に述べており、そういった点でもクラウドソーシングは適しているといえる。また、Ubuntuモバイルへの関心の高さを計るバロメーターとしても有用だろう。
メーカー、キャリア、アプリエコシステムと複雑なモバイル業界で新しいOSをローンチすることは、楽なことではない。いまやスマホ業界を席巻してしまったAndroidでさえ、Googleが2007年秋にOHA(Open Handset Alliance)結成を発表した当初は懐疑論が渦巻いていた。
Canonicalの目標額はやはり高すぎたのか? 8月末には結果がでることになる。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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