お待たせしました!著作物の二次使用(上演権など)について
まずは「電子的使用」、いわゆる「電子書籍」などについて。「著者は契約の出版社が優先的に使用することを承諾する」。この部分、ちょっと誤解されやすいと思うので補足します。
おそらく、ひとつの著作を2つの出版社が電子書籍化を競った場合、紙の書籍を出した出版社に優先権を持たせるっていう条項。「著作者本人が電子化するなら、出版社に知らせてね」という文言があります。ここでも「細かいことは話し合って決めてね」という補足が登場します。
演劇、映画、放送、録音などへの二次使用について。基本的に出版社に「使用に関する処理」を委任されることが、ほとんどのケース(僕の契約の場合)。つまり、まず出版社(代表もしくは、担当者が)が他メディアとの交渉の立場になるようです。しかし、重要なのはその次の文言「著作者は出版社と協議のうえに決定する」。
出版社が交渉を委任されているとはいえ、勝手に「YES」「NO」を決められないようになっているところ。「持ち帰って、著者と相談します」ってするのが基本です。
契約書をあらためて読んで感じるのは、「著作権」は著作者を強く守るように書かれていることです。たびたび登場する「甲(著作者)と乙(出版社)が協議の上、決定する……」という文言は、ひとつの契約書でも7回以上登場します。出版社が知的財産法である著作権法で定められる著作権を侵害しないように気遣った契約になっているのでしょう。(ときどきニュースに登場する、作家とメディアのトラブルを見ると、法や契約の運用については少なからず問題があるのかもしれませんが……)
面白い条項では、「著作権や出版権」を質入れするときは、お互いに文書で同意が必要なんてあります。(同時に出版社も出版権を質入れできる)「そうかぁ……、同意すれば著作権も質草になるんだぁ……」と感心しました。
もうひとつ、忘れてはならないのは、上に紹介したような出版時の縛りを著作者が不服であれば、契約時に「この条項は外してください」と申し出ることもできるところ。
もちろん、筆者は文芸作家ではありませんし、細かな出版契約の条項は各社、各人違うと思います。しかし、大まかな条件はほぼ同じと想像しています。なぜなら、出版社自体も競争の原理が働いてるからです。出版社が著者を選べるように、著者も出版社を選ぶことができます。少なくとも筆者が結んだ多くの契約書では、どのポイントも類似したものでした。
著者と出版社の関係、こんな一般的な契約条件を知った上でニュースを眺めると、少し踏み込んだ感想を持てる気がしています。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。
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