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ITCによるiPhoneの米国輸入差し止め令を覆した米政府

2013年08月06日 07時30分更新

文● 末岡洋子

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 米通商代表(USTR)は8月3日、米国際貿易委員会(ITC)の判決のもとで今週にも施行される予定だったAppleのモバイル製品の米国への輸入および販売禁止令について、拒否権の行使を発表した。標準必須特許を主張して競合他社製品の販売禁止を求める動きに対し、過度な影響力を懸念する意見を尊重した形となる。

 Samsungの申し出を受けてAppleがSamsungの特許を侵害しているかどうかを調べていたITCは、6月4日にAppleが1件の特許を侵害しているとして該当製品の米国への輸入および販売を禁じる販売差し止め令を下していた。特許は米特許番号7,706,348で、CDMA無線通信技術に関するもの。

 該当するのは「iPhone 4」「iPad 2」などの旧製品5機種。なお、Samsungが2011年8月にAppleを提訴した際は、5件の特許を主張していたが、ITCは初期判定で4件の特許についてAppleの侵害は見られないとする見解を下した。その後、この初期判定の見直しを経て、正式判定が下った形となる。

 USTRのMichael Froman氏は書簡にて、米国経済での競合への影響、米国消費者への影響に関連して関係者と議論をした結果、ITCの決定に拒否権を行使することにしたと説明している。

 文書ではまた、FRAND(Fair, Reasonable And Non-Discriminatory:公正、合理的、かつ非差別的)な条件でライセンスされる標準技術の必須特許(SEP:Standard Essential Patent)について大部分を割いて見解を説明している。そこでFroman氏は、FRAND条項で特許をライセンスすることに自主的にコミットしているSEPの所有者が過度の影響力を得ており、その標準技術を実装する企業を市場から排除し、ライセンス料を高く設定するなどの行動が見られることを懸念するとする、司法省と特許商標庁が1月に公開した政策声明に同意すると記している(SEPの所有者は通常、標準化の策定段階で、FRAND条項でライセンスすることにコミットすることに合意している)。

 この拒否権の行使はITCの決定や分析に対する支持や批判ではなく、特許保有者のSamsungが賠償を得られないとするものではないとし、Samsungは引き続き法廷にて自社の権利を追求できるとしている。

 New York Timesによると、米政府がITCの輸入禁止令に対して拒否権を行使したのは、1987年以来26年ぶりという。訴訟ではAppleはSamsungが該当特許を自社にライセンスすることを約束しながら、実行しなかったと述べており、SamsungはAppleがライセンス料を払わなかったと主要していたとのことだ。

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