不正使用対策の技術力では、国際的なクレジット業界のセキュリティ基準であるPCI DSSについても大手EC加盟店などと同じ高いセキュリティレベルを持ち、監視業務に多くの社員が従事しているという。誰でもリーダーを入手すれば即利用できる便利さは、リスクヘッジできる技術力が高いからこそ提供できるのだ。
ちなみに、発表当時は業界でもっとも低いことで話題となった3.25%の手数料は、最終的にジャック・ドーシーが日本の市場状況を見たうえで判断したという。「我々が決めたと思われるのは間違いですよ。それだったら、クオーター(.25)の数字にならない(笑)。我々にとっても驚きだったんです」。
その後、楽天やPayPal Hereなどが3.24%の手数料を発表しているが、野泉氏によるとスクエア側はさらなる手数料競争には興味がないという。「スクエアなら決済だけではなくサービスまで含まれている。そのサービス利用料として3.25%を納得して払いたい、というお客さまをターゲットにしているという点はぶれないだろう」
先進的なことをやらないと生き残れない
一方で、ジャーナリストの岩田昭男氏によると、カード機能がスマホに組み込まれることで、カード業界は今後変化が必至という。「スクエアのようなところとうまくやっていくことが必要。先進的なことをやらないと生き残れない、という焦りはあると思う」
その背景には、O2Oの普及によってネットもリアルも一つになりつつある、カード業界の現状があると岩田氏は見ている。「O2O時代には、スマホが優位になって、カードの現物がなくなってしまう。そうなると、決済会社としてクレジットも電子マネーも、スマホ関連のサービスやポイントも……と総合的にやらざるを得ないだろう」
そういう意味では、ネットに対しては対抗というより、融合する方向を目指すのではないかと、岩田氏は言う。「ネットと上手に融合して、ネットとリアルの差がないような感じで戦略を進める体制を作りたいはず。カード会社はネット事業者とどう連携するかが大切で、うまく行けば大化けする可能性もある」
スクエアによるスモールビジネス市場の開拓は、日本のカード業界にとっても「逆転の発想」だった。これまで日本では、日銭の安定しない業態の店舗は、まず審査でふるい落とされてしまうため、カード業界が入りこめなかったという。「審査から入るのではなく、先に端末をばらまいて良質な店舗だけ残すというのは、今までにないやり方」と、岩田氏は評価する。
岩田氏は、Squareの登場で業界再編が始まる可能性を示唆する。
「JCBやクレディ・セゾンはヤフーと提携していますが、オンライン、オフライン両方でのクレジット決済量を増やすために、集客力のあるネット企業と組むことで強くなるカード会社が出てくるかもしれません。自社のショッピングサイトのポイントとほかの販売サイトのポイントを共通化する、といった動きも出てくるでしょう。
今ではスマホが浸透していて、従来のカード決済でなければいけないという前提がなくなっている。スマホであればポイントやクーポンとの親和性も高いので、変わるときはあっという間に変わるかもしれない」
今後のSquareの普及先については、「喫茶店やレストランの置き換え需要があるでしょう。ただスモールビジネスといっても、使ってくれるところならどこでもいいのでは。逆に、百貨店のジュエリー売り場とかでもいいと思う」。手数料の安さから、確実に需要はあると見る。
すでに米国では大きな実績を上げているスクエアだが、日本のカード業界の仕組みを変え、新たな決済の場を広げることはできるのか。またスクエアの登場によって、“陸”のリアル決済市場でビジネスをしていたカード業界も、“空中戦”であるネット決済市場への参入が本格化すると見られる。リアルとネットを横断する、今後の決済市場の行方に注目したい。
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