オンライン動画プレーヤーの台頭
近年、ある意味中国独自なプレーヤーがリリースされはじめている。それは以前のディスク再生機ではなく、「オンライン動画プレーヤー」である。
ここ1年で若者を中心としたインターネット利用者が5億人を超え、その多くがブロードバンドを利用し、多くの若者がオンデマンドで見たい動画を見るようになった。海賊版DVD屋は住宅地や商業地にあるにはあるが、インターネット利用に消極的な中高年向けとなっている。
時が経っても無料でコンテンツを見ようとする中国人消費者のスタンスはまるで変わっておらず、HD画質コンテンツなどの有料コンテンツをリリースしてもまるで手を出さないが、動画サイトが海賊版をアップすれば、コンテンツホルダーが損害賠償を請求する商習慣ができあがっていた。
動画配信サイト同士によるコンテンツ配信権の購入争いが行なわれ、動画サイトは広告収入でやりくりしている。
動画サイト「楽視網」は、激安スマートテレビ「楽視TV」とセットトップボックス「楽視盤子」をリリース。以前「60型が11万円!? 中国で始まる超激安テレビ競争」という記事で紹介したので、詳しくはそちらを参照してほしい。
筆者は実際に楽視盤子を購入したが、実に使い勝手がよく、また正規版コンテンツも豊富にあり、映画を見るなど時々利用している。本体価格に楽視網のスペシャルコンテンツ1年分(ないし半年分)の利用料が内包され、その期間は視聴料を支払わずに済む。スペシャルコンテンツでなければ無料で視聴できる。
無料でしかユーザーが利用しない環境下、少しずつ動画サイトによる競争で環境が改善していき、無料で正規版が見られるようになった。
正規版コンテンツを多数内包するサイトを見るためのツールが楽視盤子であり楽視TVだ。楽視網が生き残るためコンテンツを続々と投入するから、楽視盤子や楽視TVのコンテンツも続々とリリースされる。
似たような動きは「Appleのような多機種展開でなく1機種入魂」「フォックスコンで大量発注し、ハイスペックながら低価格で安心のクオリティ」がコンセプトの「小米手机」をリリースした「小米(Xiaomi)」もしかり。
同社も楽視網同様の安価なスマートテレビをリリース予定だ。その小米手机では独自のROMを用意しているが、同社はそれをダウンロードできるようにしてあり、利用を歓迎している。「阿里巴巴」(アリババ)がリリースするスマートフォン用のAndroidを改造した「阿里云OS」も同じく、独自のROMのダウンロードを歓迎している。
中国のサイトではROMも各メーカーのものがアップロードされており、利用する人も多い。「どうせ海賊版が使われる」という中国の環境下、最初からROMを公開したわけだ。
ハードの変化以上に大きく変わるプレーヤー市場
中国独自プレーヤーは昔から今にいたる間に「ディスク再生機」から「オンライン動画プレーヤー」に変化した以上に、「政府の思惑が露骨に入った官製プレーヤー」から「コンテンツホルダーによる生き残りのための民間プレーヤー」になった意味合いが大きい。
なんとなくメーカーが作ったところで、コンテンツサイトは動いてくれず、ハードは光らない。しかし、独自技術・独自規格の旗がなくとも、今の民間プレーヤーは以前の“期待のない官製プレーヤー”とは異なり、高く評価され、普及しつつある。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D)。
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