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「ローパスフィルター」搭載、さらに音質調整も可能な高価格帯イヤフォンの新定番

発売直前、シュアの新最上位「SE846」の構造と音に迫る!

2013年07月31日 20時00分更新

文● 貝塚怜/ASCII.jp編集部

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これまでのSEシリーズは筐体に直接「SHURE」ロゴおよび型番がプリントされていたが、SE846はドライバーユニット&ノズルインターフェースに刻まれたロゴと型番がクリアーな筐体から透けて見える仕様に。音に直接関わる部分ではないが、なんとも言えない独特の上質感がフラッグシップ機にふさわしい。「ローパスフィルター」も透けて見える!

「SE846の音」は「SE846の音」

 「この革新的なイヤフォンをどういった環境で聴くべきか?」「どういった環境で聴けば正当な評価ができるのか?」

 悩みに悩んだ。「ひたすらに素晴らしさ、完成度の高さを感じる」ということに主眼を置けば、高級DAPに高級ヘッドフォンアンプをつないで聴くのが良いかもしれない。しかし、筆者は普段そんな環境で音楽を聴いていない。プレーヤーの良さやアンプの良さがSE846をまっすぐに見る視線を妨げ兼ねない。

 そこで思い付いた。「普段の環境で試してみよう」と。筆者は日頃から「iMac」(PC)→「Steinberg UR28M」(オーディオインターフェース)→「AKG K701」「MDR-CD900ST」「SE215」(ヘッドフォン/イヤフォン)という環境で音楽を聴いている。このヘッドフォン/イヤフォンにあたる部分をSE846に変更した。明らかにDTM向けだが、味付けが少ない分、制作者の意図やイヤフォンの性能がダイレクトに感じられる環境だ。何より、「普段使っているヘッドフォンとどう違うのか?」が分かりやすいはず。

従来のSEシリーズに比べて、少々丸みがかったデザイン。厚みも若干ながら増している

 ポップス、ロック、交響曲、弦楽4重奏、テクノなど、何種類かの音楽を半日ほどかけて聴いてみた。音質に関しては「実際に聴いてみないと分かりません」と言いたいところだが、それでは申し訳が立たない。無理矢理表現するなら、「もの凄い手間と費用をかけた贅沢な普通に触れ、普通ということの凄さを再確認した」といった感じ。

 全帯域が渾然一体となって押し寄せて来るような迫力もあるし、音の分離がはっきりしていて聞き取りやすいBA型の特徴も強く感じられる。しかしながら、「高域が取り立ててきらびやか」「低域がもの凄い迫力」といったような言葉で表現しやすい特徴はない。かといって、モニター的な味気ない音に落ち着いてもいない。「SE846の音」としか言えないのだ。

付属品一覧。ケースもヘアライン加工のプレートが取り付けられた、プレミアム感あふれる仕様だ

従来のSEシリーズ同様、「トリプルフランジイヤパッド」と「フォームイヤパッド」も標準添付

音質も調整可能! これぞフラッグシップ

ノズルインサートの交換で音質が調整できる。黒い方が「Warm」で、白い方が「Bright」

 SE846のもう一つの目玉が、ノズルインサート(チューブ型フィルター)交換による音質調整機能だ。「Balanced」「Bright」「Warm」の3種類から選択可能で、差し替えることで1kHz〜8kHzの帯域を3〜5db程度増減できるというもの。デフォルトではBalancedタイプが装着されている。

付属の専用工具でネジ式のカラーを取外す。「カスタマイズしている感」が楽しい

 交換方法も簡単だ。付属のノズル取り外しキーでネジ式のステンレスカラーを取り外し、差し替えて再度ネジを締めるだけ。フィルターの目の粗さに応じて音質が変化する。

ステンレス製のノズルを取り外し、ノズルインサート(チューブ型フィルター)を差し替えるだけで、手軽に音質変化が楽しめる

 Brightはより音の明瞭さが際立ち、Warmは少し耳に触りやすい角が取れる印象だ。イコライザーの目盛りを僅かに動かした程度の変化は感じられるので、好みに応じて付け替えるといい。ジャンルに応じて付け替えても楽しめるかも。

高価格帯イヤフォンの新定番になりそう

 視聴中、そして執筆中も「SE846の音を一文で上手く表せないものか」と考え続けた。そして「結局どんな音なの?」と言われても、やはり「SE846の音」としか言えない、という結論に落ち着いた。

 SE846が発表されたとき、正直なところ「低域用ドライバーが2基で4基構成かあ。じゃあSE535の低域を強調した感じかな」と思った。しかし実際に聴いてみれば、「SE535の低域に磨きがかかった音」とは全く感じなかった。

 SE535は「3基のドライバーで低・中・高域をバランス良く鳴らすためのイヤフォン」で、SE846は「4基のドライバーで低・中・高域をバランス良く、それも極限まで装飾を排除して鳴らすためのイヤフォン」だ。聴けば聴くほど、「ドライバーはSE846のために一から開発した」という話に納得がいった。

 オーソドックスで無駄のない音質と迫力を両立したSE846は、リスニング用途にもモニター用途にも高いレベルで応えてくれるだろう。高価格帯イヤフォンの定番として、必ず名前の挙がる製品になっていくのではないだろうか。

 なお販売代理店の完実電気によると、SE846は現在予約数が入荷数を上回り、8月1日の発売日に予約者全員の手元に届かない状態とのこと。すでに好調な売れ行きを見せているようだ。

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