テレビ広告とネット広告の定義は変わる
――テレビの将来像はどのようになるとお考えですか。
「今後も、テレビは前のめりに見るものではないだろうな、と思ってます。パソコンやタブレット、スマホでやっているような、欲しい情報を自ら検索するような能動的な利用スタイルに対して、特に欲しいとも思っていなかった情報が目の中に飛び込んできて興味を持つという、偶発性の創出こそがもっともテレビらしい使われ方でしょう。
リモコンでチャンネルを切り替えていたら野球中継が目に入ってくる、という受動的な流れと、YouTubeやニコニコ動画でお目当ての動画を探したり関連コンテンツを探していくという能動的な行動は別のものです。
ごろ寝しながらビール飲んで枝豆食べて、何も考えずにボ~っとテレビを見たいときが誰にでもあるはずです。今後のスマートテレビについても、そのようなテレビの従来の良さを残したまま、関連コンテンツをセカンドスクリーンに表示する付加機能が付く方向性が自然ですし、その研究は日本が一番進んでいると思います」
―テレビだけでなく、ネットの機能も充実したスマートテレビが普及していく際に、テレビ広告、ネット広告の位置づけはどのように変わっていくのでしょうか?
「インターネット広告では、PCやモバイルといった従来の分類にとらわれずにデバイスフリーで広告を扱っていくことがひとつの流れになりつつあることもあり、電通では2012年の統計から「インターネット広告媒体費」の小分類を変えました。
そこではデバイスによる分類ではなく、インターネット広告の持つ「仕組み」の側面に着目して「運用型広告」という小分類を設け、検索連動型広告のほかに、広告露出を自動的に最適化するSSPやDSP、一部のアドネットワークも含めています。
一方で、テレビを含めた4マス媒体は宣伝広告の手段として当たり前にインターネットを使いつつあります。
日本テレビの「JoinTV」や関西の各局が中心となって進めている「マルチスクリーン型放送研究会」やNHKの「ハイブリッドキャスト」のような、テレビ放送の拡張機能としてインターネットやスマホを宣伝広告に活用するシーンが将来、日常的な光景になることは確実です。その場合、インターネット広告といっても事業主体は放送局ですよね。
ネットだ、いやテレビだ、という議論で白黒付けようとしていたのは昔の話です。テレビとネットの垣根がなくなり、広告の定義も、広告費の計算の仕方も変わっていく。
広告手段が複雑化していく中、我々のような広告代理店も、クライアントのニーズに応えてどのように広告メニューを組み合わせて活用していくのか、目標設定をどこに置いてどのように効果を検証するのか、相当なアイデアが求められる時代が来るのだと思います」
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