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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第211回

チップセット黒歴史 前世代にも劣るIntel G965のGPU

2013年07月15日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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90nmに移行しダイサイズに余裕ができた
「Intel 965」

 一方もう少しGPU性能が必要という声は当然あり、それに向けてインテルは2006年に第4世代となる「Intel GMA 3000」と「Intel GMA X3000」の2種類のグラフィックコアを投入する。これを利用したのが「Intel 965」シリーズチップセットであり、GMA 3000はIntel Q965/Q963に、GMA X3000はIntel G965にそれぞれ搭載された。

GMA 3000を搭載するIntel Q965 Expressチップセット

 この世代ではチップセットのプロセスは90nmに移行しており、ダイサイズにも大分ゆとりが出てきた。まずGMA 3000は構成そのものはIntel GMA 900シリーズと変わらないものの、ピクセルピクセルパイプラインは8本に倍増され、しかも動作周波数は最大667MHzまで引き上げられた。

 相変わらずバーテックスシェーダーはソフトウェアでエミュレーション動作だったので、DirectX 7以降のアプリケーションではボトルネックになりやすかったが、CPUもCore 2シリーズが普及したこともあって性能の底上げが行なわれたし、DirectX 6世代までのアプリケーションならば「Intel 945G」と比較して理論上は3倍以上の描画性能になった。

 実際はメモリー帯域がそこまでは追いついていないものの、こちらもDDR2-800メモリー×2をサポートしたことで、以前よりゆとりが出てきたのは事実だ。実際に比較をしてみると3倍は無茶にしても、ケースによっては倍近い性能になったものもある。

カタログスペックは素晴らしいが
実際は前世代にも負ける「Intel GMA X3000」

 長い前置きが終わったところで「Intel G965」の話をしよう。このIntel G965に搭載された「Intel GMA X3000」では、すでにハードウェアの形でSM 3.0対応のバーテックスシェーダーが搭載され、これに合わせてピクセルシェーダーもSM 3.0対応となった。動作周波数はGMA 3000同様に667MHzが維持されており、「やっと本格的なGPUが搭載されたか」と喜んだものだ。

Intel G965(写真右)とCore 2 Duo

 また、MPEG-2の動画アクセラレーションに関しても、GMA 3000までは動き補償のみのサポートだったが、GMA X3000では全機能をサポート、VC-1にも若干ながら対応した。ということでカタログスペックは素晴らしかった「Intel G965」というか「Intel GMA X3000」であるが、実際に登場してみると色々不思議な事が起こった。

 確かに3DMarkなどを実施するとそれなりに性能が出るのだが、アプリケーションを動かしてみると、前世代の「Intel 945G」に劣ることがたびたび起きた。

 これはドライバーが間に合っていなかったためだ。当初から、SM3.0対応をうたいながら実際はSM2.0でしか動作していなかった。実はパッチを当てるとSM3.0相当で動作するようになるため、「ハードウェア的にはSM3.0相当ながら、これを無効化してSM2.0相当でリリースした」などと言われていたが、話はもう少し深刻であった。

 「Intel G965」がリリースされた翌年となる2007年8月にインテルは「Intel G965」向けの新ドライバーの「Intel Graphics Media Accelerator Driver Production Version 14.31.0.4859」をリリースしたが、この際に開発担当者がブログに書き込んだ内容によれば、そもそもこの新ドライバーをリリースするまで、SM3.0というよりもバーテックスシェーダーそのものが無効化されていた模様だ。

開発担当者がブログに書き込んだ内容

G965のドライバーはバーテックスシェーダーをサポートしていないと書き込まれている

 こうなるとSM 3.0をサポートするとオーバーヘッドが余分にかかるのも無理ないところ。インテルは2007年8月に「Intel G35」チップセットを投入したが、このIntel 3シリーズはいずれもDDR2/DDR3の両対応でICH9を使うのに、「Intel G35」だけはDDR2のみのサポートでICH8を使うというのは「Intel G35」が「Intel G965」のマイナーバージョンアップであることの裏返しである。

 実際Intel 3シリーズのコード名はBarelakeであるが、G35のみBroadwater-GCRというコード名なのがこれを裏付けている。要するに、G965に関しては製品を開発するのに1年余分にかかった、ということである。

G965を搭載したインテル製マザーボード「DG965WHMKR」

 「Intel G35」に搭載された「Intel GMA X3500」や、このコアを使ったモバイル向けの「Intel GMA X3100」(Intel GL960/GLE960/GM965/GME965に搭載)は、DirectX 10のSM4.0に対応しており、厳密には同じものではない。したがって本命は「Intel G35」に搭載された「Intel GMA X3500」であり、「Intel GMA X3000」はこの開発の途中過程のもの、というほうが実情に近いのかもしれない。

 性能はともかく機能という意味ではGMA X3500以上は一応水準に達しており、これを引き継いだ形で第5/第6世代のGPUに現在は進化している。当時のインテルのグラフィック部門の開発能力から考えればやむを得ないとはいえ、この狭間に生まれた「Intel GMA X3000」とこれを搭載した「Intel G965」は中々にかわいそうな存在であった。

 せめてもの救いは、この当時からインテルの統合グラフィック性能の低さは定評があり、インテルの宣伝とは裏腹にほとんどのユーザーが「Intel GMA X3000」になにも期待していなかったことだろう。

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