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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第116回

「VAIO Duo 13」—革新は形だけじゃない! 変形ハイエンドモバイルに込めた思い

2013年07月13日 11時00分更新

文● 西田 宗千佳

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「中央ヒンジ」への変更で構造は大幅に変わる

 パワーの面でいえば、VAIO Duo 13で重要だったのは「Configurable TDP」(CTDP)である。CTDPは、利用状況に応じて熱設計許容量を変える仕組みであり、VAIO Duo 11も対応している。VAIO Duo 13では、キーボードを出した構造の時にTDPを25Wまで上げる。それによって、VAIO Duo 13のパワーは、VAIO Zに「PowerMediaDock」を接続して外付けGPUで動かした時よりも、さらに高い性能を得ることができた。

CTDP 25W対応によって、CPU/グラフィックス性能の向上を実現した

 だが一方で、それは「放熱」との戦いでもある。

 VAIO Duo 13は、VAIO Duo 11から大幅にヒンジ構造を変えている。VAIO Duo 11は本体横幅に近い、かなり大きなヒンジが採用されていたが、VAIO Duo 13のヒンジは中央にだけある。機構のシンプル化はもちろん、軽量化にプラスに働くが、すべてがプラスに働くわけではない。元々VAIO Duoシリーズは、ディスプレイの裏にある「空間」を生かすことでエアフローを得る構造であり、だからこそCTDPが実現できているのだが、軽量化を求められたVAIO Duo 13では、色々と苦難が存在した。

VAIO Duo 11は本体横幅に近い、かなり大きなヒンジが採用されていた。VAIO Duo 13のヒンジは中央にだけある

笠井:私がプロジェクトリーダーに依頼したのは、「11インチの筐体で必ず13インチを入れてくれ」ということです。あとは、タッチパッドを入れること。

 それに「WAN」を載せ、「Allways On、Always Connected」を実現することです。元々我々は、PCにタッチを載せることで相乗効果を生み出そうとしていました。でもVAIO Duo 11では、ヒンジがサイドまで広がった構造だったので、どうしてもWANが搭載できなかったんです。なので最初から「ヒンジをセンター化する」ことは大命題として決まっていたんです。

花塚:VAIO Duo 11ではヒンジにマグネシウムを使っていました。13ではアルミ合金になり、肉厚は上がり、サイズも3分の1くらいになっていますが、結果的に30gくらい軽量化しつつ、さらに強度も維持されています。

VAIO&Mobile事業本部 第1事業部 設計1部1課 プロジェクトリーダーの花塚暁氏

 WANは結局上(ディスプレイ上部)に入っています。無線LANは左右ですね。VAIO Duo 13ではヒンジが真ん中にあるので、必然的に基板はこの面積に収めるしかないんですね。今まではヒンジが左右にあった分大きくて良かったんですが、今度は内部が小さい分、非効率になってしまったんです。ですが今回はこのサイズに基板を収めることができたので、実現しました。

写真で指を差している箇所に基板が収まっている

笠井:このデザインの特徴は「薄い板が宙に浮いてる」感じなんです。従来のVAIO Duo 11に比べると、C面(角のカット分)の取り量が広いんですよ。面が浅いと浮いているように見えないんです。こういう構造にしているのが、薄く・未来感があるように見せている秘訣なんです。

VAIO Duo 13は、角のカット部分を大きくもうけたデザインにも注目だ。手に取りやすく、薄い見た目にすることに成功している

左がVAIO Duo 13で、右がVAIO Duo 11。VAIO Duo 13のほうが薄い印象を受けるはずだ

 このデザインを実現するため、そもそも面の取り量が規程されているので、さらに狭い。その中で作る、というのが厳しかったんです。

花塚:バッテリーもConnected Standbyに対応するため、容量が必要です。VAIO Duo 11以上になっていますから、体積としても半分以上がバッテリーということになります。

VAIO Duo 13のバッテリー

笠井:CTDPで25Wを実現すると、放熱的に当然厳しくなります。これも最初に決めていましたので。しかも、センターヒンジで構造をわけています。本来はCPUの一番近くにファンを置くのが熱的には有利なんですが、長いヒートパイプで伝導するしかありません。その分、熱量を逃がせるファン性能が必要になります。だからファンのサイズも最初から決まっていました。その上で、残った領域にすべてを入れなければならなかった、ということです。

ファンは、本体右側奥に配置されている

ヒンジの下部に見えているのが、ヒートパイプ。手前側のメイン基板から写真奥にあるファンまで熱を伝導させている

 ちなみに、薄く見せるために「C面」を大きく採った結果、背面で「ビス留め」できる場所も限られてきた。もちろんキレイに見せなくていいならいくらでも方法はあるが、キレイな背面を実現するには、ビスを打てる場所は限られる。

VAIO Duo 13の背面は非常に美しく、分解後の背面を見ると、巧妙にビスが隠されているのが分かる

花塚:ビスは斜めに打つことになったんです。斜めに打つ場合にも、斜めに打てるようにパーツを作るとケースが金型から抜けなくなるので、ビスを打つための基部だけを別に作って貼り付けています。

ビスを斜めに打つための基部だけを別に作って貼り付けている

 ビスが斜めだとビスがきちんと打てませんから、治具によって本体を受けて、本体を斜めに回転させながらビスを打っています。

製造工程では、本体を斜めに回転させながらビスを打っているという

笠井:ビス留めのパーツは強い強度で止まっている必要があります。二色のエポキシボンドでつけているんですが、適正になるよう、その混ざり具合は画像認識で判別してやってます(笑)。

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