世界で初めて、Coreプロセッサー搭載機で
「Connected Standby」をサポート
そしてもうひとつ、VAIO Duo 13には大きな特徴がある。Windows 8で規程されている「Connected Standby」に対応した、ということだ。Connected Standbyとは、PCの新しいスタンバイモードで、CPUや通信モジュールは動作させつつ、ディスプレイはオフになっている状態を指す。通信などは裏で行ない、必要があればディスプレイも素早く利用可能な状態にできる。要は、スマートフォンやタブレットにおけるスリープと同じような要素を実現するために必要なものだ。
だがこれまで、x86系プラットフォーム+Windows 8では、Atom+32bit版Windows 8でしか利用できなかった。それが、Haswellプラットフォームを使い、いよいよ「フルスペックのPC」+「64bit OS」で利用可能になる。VAIO Duo 13は、世界初の「Coreプロセッサーを使いつつ、Connected Standbyに対応」する製品となる。
といってももちろんHaswellだけでできることではない。システム全体での省電力化が必須だ。
土田:メモリーにも、スマートフォンなどに使っているLDDR3を使っていますし、液晶ディスプレイにも「PSR」という、パネル側で消費電力を下げる規格に対応したものを使っています。パネルだけでも、システム全体の10%くらいは減ります。
土田氏の言う「PSR」とは「Panel Self Refresh」という技術に対応したパネルのこと。液晶パネルのコントローラ側にフレームバッファを持ち、画面変化がない場合には本体側のメインメモリーにリフレッシュをかけないことで、消費電力を下げる仕組みだ。
笠井:液晶についてはさらに説明が必要ですね。パフォーマンスを落とさずにモバイルすることを徹底していますが、画質を落とさずに消費電力を下げることを狙っています。
土田:高解像度化と高画質化は、消費電力と相反します。今回は、モバイル性と高画質化を両立しており、その上で省電力性を実現するために、バックライトに工夫をしています。「集光バックライト」という仕組みなのですが……。これまでは広がっていた光を、視野角を狭めない範囲で集光し、電力の効率化を図っています。
笠井:これは、導光板の工夫によって実現しています。ですが、バックライトの側も特別なものを使っているので、省電力性という意味では両者かな……と。集光バックライトについては、PCではやっているところはまだないと思います。
PCでやりにくい理由は、構造的にひずむと「白ずみ」しやすいからです。モバイル利用でひずむと色がおかしくなるので他社さんはやらないのだと思うのですが、我々は「セットに最適な設計」を考えて設計していますので、やりました。液晶ベンダーからパーツを買ってくるだけでなく、液晶ベンダーとも、その先にいる導光板やバックライトなどの部材ベンダーとも、一緒に作っているんです。直にやり取りし、製造と設計が一体になって評価しながらやることで、こうしたことが可能になっています。
「紙を越える」ために「Zを越えるパソコン」へ
だが笠井氏は、VAIO Duo 13は「Connected Standbyありきの製品ではない」という。むしろ製品として狙うところを考えると、Connected Standbyが「必要」だったのだ。
笠井:冒頭で述べたように、VAIO Duo 11では「紙を越えられていないのではないか」という点から企画が始まっています。私もプレゼンをたくさんしますが、その作成はPCでやっています。でも、その前の「考える」作業は紙でやっていました。その部分、思いついたことを書く、という部分がPCにはできていなかった。
でもPCには、紙のノート、アナログでできないことが多くあります。ですので、VAIO Duo 13では、「アナログの紙に負けているところはないのか」を考えました。紙のノートのアナログ面の良さを、PCへと持ち上げることで、初めて紙の置き換えができると考えたのです。
笠井氏の言う「紙を越えられていない部分」とは、次のようなものだ。
紙は電源が不要で、起動待ちがない。バッテリー動作時間も気にしなくていい。11インチサイズのディスプレイはコンパクトだが、紙の感覚で描くには小さい。
そうした問題を解決しようとすると必要になるのが、HaswellとConnected Standbyの機能だ。
バッテリーが長時間持って、起動が素早いというのは、まさにそれらの結果。ディスプレイサイズの大型化は、「第二世代」を見据えた設計見直しの結果。
VAIO Duo 11は、不調が伝えられたWindows 8搭載PCの中ではヒット商品。そのコンセプトの再構築を考える時にHaswellが登場したのは意図したものではなく、ある種の偶然ではあるが、VAIO Duo 13開発チームにとってはきわめて大きな幸運であった。
笠井:アナログの領域に近づけるため、書き味の向上と電源のオンオフを感じさせないことが必要でした。ですからそのためのConnected Standbyを使った、といったほうが正確です。0.3秒で起動するようにするには、従来の設計では事足りないのです。
また、もっと軽くするという発想もあったのでしょうが、容量を絞って軽くするアプローチでなく、動作する時間を長くする、というアプローチを採りました。書く領域を広げるという点では、13インチ化が必要でしたし。
また、このサイズの中で最高のパフォーマンスを準備することも必要と考えました。もちろん、手書きではそこまでのパフォーマンスは不要です。しかし、CADなどの用途を考えると、やはりパワーは必要です。CADの世界では、ペンを使ったオペレーションが注目されています。それだけでなく、写真加工や動画編集なども重要です。ですからこのサイズに「Z」相当のパフォーマンスを搭載しようと考えました。VAIO Duo 13は、Zを引き継ぎ、クリエイティビティ向けも含めた、VAIOのフラッグシップです。
ここでいう「Z」とは、昨年6月に発表された「VAIO Z」である。最高性能のモバイル「ノートパソコンとして、ソニーはながく「Z」のブランド名を使ってきた。VAIO Zは内部に光配線を使ってまで、外付けGPUを使った「パワー」を準備した製品でもあった。実は笠井氏は、このVAIO Zの開発を担当した人物だ。笠井氏がVAIO Duo 13を担当するのは必然だろう。
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