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買収から1年、Office 365やSharePointとの統合強化で加速する企業SNS

「Yammerは1億ユーザーを目指す」MS担当者が語る成長戦略

2013年07月16日 09時00分更新

文● 大河原克行

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Office 365、SharePointとの統合と機能強化

 こうしたトレンドを踏まえながら、スパタロー氏は「企業においては、エンタープライズソーシャルがますます重要視されるようになる」と語る。

 「コンシューマー領域におけるソーシャルネットワークの利用は、メッセージングやニュースフィードが中心だった。だがビジネス領域でのそれは、多くの人がこれまでにない非組織的なかたちで、共同で業務を遂行し、成果を上げるというまったく新たな世界となる。効率的なコラボレーションによって従業員の能力を引き出し企業競争力につなげること、業務プロセスやプロダクトのイノベーションを実現することが可能になる」

 一方で、これまで業務に利用してきた電子メール、インスタントメッセージ、ビデオ、コラボレーションなどのツールを、いかにソーシャルネットワークと統合していくかが課題となる。

 「その観点でも、マイクロソフトは他社にないユニークにポジションにある。幅広い製品をカバーするポシジョンにある強みを生かして、将来の新たな仕事のやり方の定義を確立していきたい」

 今年6月、マイクロソフトはYammerと「Office 365」「SharePoint」の統合を行った。スパタロー氏は、この統合を通じて「Yammerが標準のソーシャルネットワークツールになる」ことを強調した。

 「今回の統合はまだ第一歩にすぎない。さらに統合を進めるため、我々は90日ごとに新たな機能を追加し、YammerとOffice 365、SharePointの関係をより緊密なものにしていく」

Yammerの強みは“ウイルスのような”普及力

 1年前の買収当時、Yammerのユーザー数はおよそ500万人だった。それから1年経過した現在、そのユーザー規模は800万人にまで拡大している。

マイクロソフトによれば、YammerはFortune 500企業の85%で利用されており、有償版は対前年比200%の伸びを見せているという

 エンタープライズソーシャル市場そのものに対する追い風もさることながら、スパタロー氏は、ユーザーがセールスフォース・ドットコムの「Chatter」やIBMの「Connections」ではなくYammerを選択する明確な理由があると説明する。

 「Yammerの差別化要因は、最初からウイルスのように広く、急速に普及することを狙って開発されている点だ」

 オープンな会話、オープンなコミュニケーションを目指すYammerでは、新規ユーザーのサインアップがワンクリックで行えるなど、いかに参加しやすくするかに力点が置かれているという。

 「ワンクリックのサインアップという機能は単純だが、実はとても重要なものだ。ソーシャルネットワークは多くの人に参加してもらうことこそが大切であり、それを実現するための象徴的な機能だと言える」

 さらに、強力なインテリジェントエンジンをベースにした機能も、Yammerの大きな差別化要因になっているという。

 「誰かがサインアップした時に、この人とつながったらどうか、このグループに入ったらどうか、こうしたアクティビティはどうか、こうしたファイルを見てはどうかといったことが提案できる」

 一方で、競合のChatterについてスパタロー氏は、トップダウン型のセールスによって導入され、その後にソーシャルメディアとしての普及戦略があること、CRM製品を中心に開発されたものであること、ユーザーの会話ではなくシステムアップデートによってニュースフィードが埋め尽くされてしまうことなどを指摘した。

 「ChatterはCRMからスタートしており、そこからの脱却に苦労している。一方でYammerはどんな部門の人であろうが、その生産性を改善することができる。これは当社がOfficeアプリケーションを提供するなかで実証してきた、マイクロソフトのDNAである」

 またIBMのConnectionsについても、「IBMはソーシャルがクラウドになるという認識を得るのに時間がかかった。ConnecionsをはじめとするIBMの製品は、トップダウン型の製品展開であることや、Notesが数多くリプレースされている現状や、Lyncの対抗製品でも使われていないなど、弱点が多く、穴が多い」と痛烈に批判してみせた。

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