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前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック” 第20回

新しいiPhoneで採用 フラットデザインを知ったフリ

2013年07月05日 09時00分更新

文● 前田知洋

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知ったかぶるポイント1
小ちゃくても見やすい、操作のしやすい理由はコントラスト

 iPhoneなどの携帯デバイスでは、もうこれ以上画面が大きくなりようがありません。これは世界中のトランプやクレジットカードが、だいたい同じサイズと形になったことと似ています。スマートフォンなどのデバイスを手に持つ限りは、人間の手にとって使いやすいサイズは変わらないからです。となると、その画面にいかに効率よくアイコンやボタンを表示するかが鍵になってきます。

 フラットデザインは、テクスチャーやシャドウ(陰)を無くし、コントラストがハッキリしていて、小さなアイコンでも見やすくなっています。「最近、ちょっと、目が悪いんですよね」という人や、電車での移動中にも見やすく、使いやすいデザインです。

サイズが小さくなっても見やすく、明るい色調になった

知ったかぶるポイント2
レイヤーの概念が案外わかりやすい

 フォトレタッチや画像編集などをする人にはおなじみの「レイヤー(layer)」という言葉。英語では「服を重ね着する」とか「地面を雪が覆う」などの表現に使われる単語です。新OSでは、「背景」「ホーム画面」「コントロール画面」の3層のレイヤーがスタンダードとして使われています。

 ちょっと前まで、筆者は、レイヤーを「アニメのセルと同じで…」なんて説明をしていました。しかし、最近のアニメはコンピュータで製作されているようですし、興味のない人には「セル?」なんてことも…。筆者の経験では「Tシャツの上にベストを着てGジャンを重ね着、みたいな…」と説明すると男女、年齢差を問わずレイヤーが理解しやすいようです。

 レイヤーが重なることで、ユーザーは一番手前にあるモノから操作していけばいい。服を脱ぐなら、一番外側から。服を着るなら内側から。それが基本です(笑)。

レイヤーで構成されていることで、操作の優先度がイメージしやすくなった

知ったかぶるポイント3
デザインがデジタルネイティブ寄りになった

 絵画が19世紀に「写実主義」から「印象派」にトレンドが移ったように、21世紀ではコンピュータのインターフェイスのデザインも、実際の物から機能などを抽象的にイメージしたものになりました。たとえば紙の質感を表現したメモ帳や、リールのついたテープレコーダーなどのモチーフが、シンプルで洗練された記号的な表現に変わるのは自然なことです。

 写実的なインターフェイスは、初めてコンピュータに触れる人に機能や操作法のヒントを与えるためでした。しかし、絵画が写真の発明、普及によって記録という役割が終わったように、コンピュータのインターフェイスに初めて触れるオトナも少なくなってきました。街を見回せば、ATMから駅の券売機までタッチスクリーンであることが当たり前になってきています。

はじめからタッチパネルをイメージさせる、デジタルネイティブに寄った記号的なデザインが採用された

 こうしたことから、デジタルネイティブ(生まれたときから、インターネットやパソコン、スマートフォンが生活環境で育った世代)よりのインターフェイスになったともいえます。エレベーターの前で「うぁっ!押すと引っ込むボタンなんて珍しい…」なんて時代がやってくるのかもしれません。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。

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