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カオスレーザーでデータ防衛

毎秒2ギガの乱数作れ NTTの研究に熱視線

2013年07月03日 16時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)/アスキークラウド編集部

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 いわゆる乱数暗号に関するNTTの基礎研究に、にわかに注目が集まっている。

 NTTが研究しているのは、レーザー光線を使ったカオスレーザーと呼ばれる技術。半導体レーザーから出た光を鏡で反射し、レーザーに戻す。レーザーにふくまれる自然放出などの微少なノイズを、反射によって増幅する仕組みだ(カオス現象と呼ばれる)。

 この特性を応用すれば、毎秒2ギガビットの速さで乱数をつくりだすことができる。このスピードは現行技術とくらべて200倍近く高速だ。

 NTTは2011年に埼玉大と共同研究を発表、課題とされていたモジュールの小型化に成功。従来の1万分の1以下、1cm×2cmサイズで有効な結果を得ることができた。予測不可能性も実験で証明され、実用化をめざした研究が進んでいる。

 暗号技術が使われる先は、クラウドだ。いまNTTでは全社をあげて、ビッグデータ解析など企業向けのシステム、サービス開発への取り組みを進めている。

 先月28日、NTTデータはソーシャルメディア「微博」(ウェイボー)など、中国の書き込みを分析するビッグデータ解析サービスを開始。同日には、日立系のシステム会社DACSを買収した。同社の主力業務である、りそな銀行の運用システムを強化する。

 国内上位10%にあたる巨大企業から、中国進出を考えている中堅企業まで。データ販売の窓口をひろげるにあたって、企業から重要視されるのはセキュリティ問題だ。サイバーテロも常態化し、企業が被害を受けることも増えてきた。

 先日、日立製作所は、「Suica」の履歴情報をマーケティング情報として企業に提供するサービスを7月1日より開始すると発表。JR東日本が提供するデータには具体的に「個人情報は含まれていない」とされたもの、ネットでは「気持ち悪い」「監視されてるみたい」とたちまち批判の声が集まった。

 現在、ネットワークコストは年60%の割合で下がり、モバイルのデータ通信量は年間2倍以上のペースで増えると言われている。

 これから高度クラウド化が進むにつれて、家電だけでなく、クルマに交通機関、医療現場まで、私たちのあらゆるデータがネットワークで管理・運用される。いくつかのデータさえ手に入れば、私たちはたちまち丸裸にされてしまうだろう。

 その中で、データを悪意ある第三者に渡さないための対策はまさに喫緊の課題だ。コンピューターの進化をささえてきた暗号化技術、これからの研究成果に期待したい。

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