独自のStacked DRAMを採用する
「Volta」
Maxwellの後にはVoltaが控えている。しかし、このVoltaはさらに難しい。Voltaでは今のところHMC(Hybrid Memory Cube)を使う予定がなく、独自のStacked DRAMを使うとしている。これは、最高速であるGDDR5の7Gbps品をすでに使ってしまっており、この先速度の向上がまったく望めないため、Voltaの世代ではGDDRを捨てて独自の規格にしたということである。
構造的にはHMCと似ており、下図のように複数のDRAMチップを縦方向に積層、一番下にI/Fがあるという構造だ。このDRAMチップ同士とI/Fを繋ぐのがTSV(Through Silicon Via:シリコン貫通ビア)と呼ばれるもので、現在ファウンダリー各社や独立系の半導体メーカーが実現を急いでいる。
試作のレベルでは色々製品もあり、きわめて限られた用途では実用にもなっているのだが、現時点では量産のレベルに至っておらず、またコストの面でもかなり高価になることが予想されている。
実のところ価格は卵と鶏の関係にあるので、どこかが量産に入らない限りなかなか下がらない。逆に言えば、誰かがエイヤッと始めると、急激に下がる可能性もあるのだが、Voltaはこの独自Stacked DRAMを使う前提で開発が進んでいる関係で、2014年中は難しいと見られているためだ。
TSMCもTSVの実用化に向けて開発を進めているが、今のところTSVが利用可能になる時期を明示していない。TSVそのものはCoWoS(Chip on Wafer on Substrate)で利用できる(関連リンク)ことをアナウンスしているが、これは上図のように複数チップをどんどん積み上げるものでなく、1つのチップとシリコンで作られた補助基板(Substrate)の間のみをTSVで繋ぐという限られた用途向けだからだ。
TSMCは学会などではTSVの実用化に向けた様々な研究成果を発表し続けているが、まだそういう段階という言い方もできる。2014年中に量産試作が出来るかどうかも怪しく、現実問題としては2015年以降になるだろう、というのが一般的な見方とされている。したがってTSMCのTSV技術をベースとするVoltaのStacked DRAMの登場時期も2015年以降となるだろう。
幸いにもMaxwellの場合、2014年中には製造技術を16nm FinFETにアップデートできる可能性が高い。16nm FinFETの場合、配線層そのものは20nmプロセスのものをそのまま使い、トランジスターのみFinFETに入れ替えることになる。つまり回路規模を大きくするとダイサイズがそのまま増えるため、回路密度そのものは変わらないまま、動作速度の向上や消費電力の低減が期待できるので、これでもう一段性能を改善できる。
個人的には、先に述べたGM100かGM110かわからないが、GPGPU向けのダイは、20nmプロセス世代をスキップして16nmプロセス世代で投入されるのではないかという気がしているが、残念ながらこのあたりはまだ確たる情報が存在しない。
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