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開発者に問う、富士通の“刀”―「LIFEBOOK UH90/L」開発の舞台裏 (4/5)

2013年07月05日 11時00分更新

文● 日高彰

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Haswell世代でもエンジニアの腕の見せ所となる「熱」と「配線」

——PCにおける技術面でのトピックとしては、今シーズンはHaswellこと第4世代Coreプロセッサーの登場が最も大きな話題となっていますが、端的に言って、HaswellによってPCの設計はやりやすくなるものなのでしょうか?

山田氏:今までCPUとチップセットのふたつだったものがHaswellではひとつになったことで、パーツの実装面積を削減できますので、空いた分を配線に使用できますし、多くの機能をコンパクトに詰め込むという意味ではメリットは大きいです。しかし、2チップ構成のときはその先につながるデバイスの近くにチップセットを置けたのに対し、1チップ構成の場合マザーボード上のどの場所にどの向きでCPUを置くかによって、レイアウトがある程度決まってしまいます。なので、自由度という意味では難しくなる面もあります。

——モバイルPCの開発につきものの、熱の処理に関しては今回はいかがでしょう?

立神氏:これだけ筐体が薄くなってくると、熱が外に運び出されるまでに別の部分に伝わってしまうのが大きな問題となります。

 厚みがあれば、あまり他の部分に伝えずにファンの風で熱を筐体の外へ持っていけるのですが、ここまで薄いと、熱が外に出る前に筐体の底面などに伝わり、膝の上や手の平に熱さを感じさせてしまいます。

 例えば、この製品ではCPU自体の発熱はヒートパイプで外へ運んでいます。しかし、CPU自体の温度は比較的簡単に外に伝わってしまうため、ヒートパイプで熱を逃がさずに出口までもっていく、これが難しいのです。

【機構設計担当】立神一樹氏(富士通 パーソナルビジネス本部 第一PC事業部 第一クライアントプロダクト事業部メカニカルデザイン技術部)

——富士通のUltrabookではどのように熱問題を解決しているのでしょうか?

立神氏:断熱に最も効果が高いのが、“空気の層”です。しかし、筐体が薄いとどこにでも空気の層を作れるわけではありません。そこで、どれだけの熱を外部へ持っていけるのか、どれだけの熱が内部にこもってしまうのかを、設計初期の段階でできるだけ正確に解析し、どうしても熱がこもってしまう部分に優先的に空気の層や流れを確保するようにしています。

 例えば、発熱源としてよく気にされるのはCPUですが、実際にはメモリやHDDからも発熱があります。これらからの発熱量はそれほど大きくないのですが、ずっと熱が停滞していると次第に筐体に伝わって、ユーザーは熱く感じてしまう。そういう場所に空間や、自然の空気の流れを作ってやるということが必要になります。

——従来のLIFEBOOK UH75/Hと今回のLIFEBOOK UH90/Lでは本体サイズの大枠はほぼ同じですが、プラットフォームも変わり、内部的にはイチからの設計ということになりますか?

山田氏:もちろんネジなどは同じ規格品もありますが、それ以外は完全に新設計と言っていいと思います。今回初めての試みとして、これだけの機能を持ちながら、基板の片面だけにすべての電子部品を実装することに成功しました。基板は実装面が下に向いた形で収められており、基板の上面には凹凸がないので、じかにキーボードを置くことが可能になり、薄型化と高剛性に貢献しました。

 まさに、この構造が超圧縮グリッド構造の一要素になっています。

 技術的に細かいお話になりますが、配線の層の間を接続する「ビア」と呼ばれる穴が、基板の表から裏まで貫通している貫通基板を採用しています。この基板は、製造技術的にはむしろローテクなタイプですが、軽量化に寄与します。ただ、配線を通せる部分が少なくなるので、限られた面積に部品を詰め込むという点では難しく、配線を引ききれなくなることもあります。片面実装と貫通基板の採用は、回路設計担当としては苦労してチャレンジした部分となっています。

今回初めての試みとして、これだけの機能を持ちながら、基板の片面だけにすべての電子部品を実装することに成功した。回路設計担当の山田氏は、片面実装と貫通基板の採用が苦労したチャレンジだという

——HDDを搭載したUltrabookというところがLIFEBOOK UHの大きな特徴ですが、今回はHDDの中にキャッシュ用のフラッシュメモリも内蔵した、ハイブリッドHDDを初めて採用していますね。

山田氏:従来、HDDの高速専用にSSDを搭載していましたが、これらがハイブリッドHDDの1個だけになりました。違うふたつのモジュールをコントロールするよりも、ひとつだけのほうが制御しやすいですし、もちろん実装面積の削減にもなります。実際には、この製品はグローバル展開を前提として開発しているので、内部的にはNGFFモジュールを搭載するためのスペースは用意してあるのですが、そこは各国市場の要求にあわせて他の機能を追加するための余裕として残してあります。

松本氏:商品企画の側からは、「(薄い状態でも)有線LAN端子はアダプターなしで搭載する」ことをどうしてもやりたいポイントとして技術陣に要求しました。店頭だけでなく、ビジネスユースでも、ワールドワイドでも売っていきたい製品というところがあり、「本当に強度が保てるのか」などとさんざん怒られながらも、評価部門を含めいろいろな方法で抜き差し確認を実施し、強度にも問題がないことを確認し、何とか実現できました。

LIFEBOOK UH90/Lは、有線LAN端子を内蔵している点も実は特筆すべきポイント。しかも、LANケーブルのコネクターに付いているツメが上側になるデザインのため、抜き差ししやすい

山田氏:LIFEBOOK UH75/HのLAN端子はアダプターを介して接続する形ですが、アダプターをなくしたら困るといった声をいただき、機構的には難しいところでしたが、LIFEBOOK UH90/Lでは通常のLANケーブルをそのまま接続できるようにしました。さらに、ケーブルの取り外しがしやすいよう、コネクターに付いているツメが上側になるような向きにしてあります。

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