6月上旬、米当局が極秘に個人情報を収集してきたことが明らかとなり、世間の大きな関心を集めた。この問題を告発したのが、米中央情報局(CIA)元職員および国家安全保障局(NSA)元局員のエドワード・スノーデン氏だ。国家機密をリークした同氏と、その身柄を追う米政府の間で勃発したこの告発~逃亡劇は、ほかの国々をも巻き込み、国際情勢も絡めて複雑に発展している。「米国政治史上で最も重要な内部告発」のひとつとされるこの「スノーデン事件」の顛末を以下にまとめてみた。
6月6日
騒ぎの発端となったのが英ガーディアン紙や米ワシントン・ポスト紙の報道。NSAがユーザー情報を収集する「PRISM」というプログラムを介し、アップルやマイクロソフト、フェイスブック、グーグルなど通信事業者やインターネット関連会社のサーバーから利用者のデータを収集していると報じた。
6月9日
英ガーディアン紙や米ワシントン・ポスト紙は、スノーデン氏が情報源であることを明かした。また、同氏もそれを認め、NSAが行った詳細を説明。そして今回のリークが、米政府によるプライバシーの侵害や基本的人権の破壊を許すことが出来ない、と義憤に駆られての行為であることを明かした。なお、同氏はこの告発が公になる以前に、同氏は香港に渡っていた。
6月10日
スノーデン氏が勤務していたコンピューターコンサルティング企業ブーズ・アレン・ハミルトンは、同日に同氏を解雇した。
6月12日
スノーデン氏はさらに、NSAによるこの通信傍受の標的が米国だけにとどまらず、香港と中国もターゲットであることを暴露。香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストによると、NSAの標的は6万10000件にのぼり、このうち中国のコンピューターが数千件を占めるとのこと。
6月22日
スノーデン氏の告発は当然、世界的に大きな反響を呼び、一部では同氏を「英雄」と称える声もあがったが、その一方、米連邦検察当局は22日までに同氏をスパイ活動や政府所有物の詐取などの罪で訴追した。米ワシントン・ポスト紙によれば、米政府はスノーデン氏の潜伏先とされる香港の関係当局に対し、同氏の拘束を求めたと伝えた。
6月23日
米政府は23日までに、スノーデン容疑者の滞在先とされる香港に対し、同容疑者の身柄引き渡しを請求した。また、オバマ政権高官は同日、ロシアやエクアドル、キューバ、ベネズエラなど中南米諸国に対し、スノーデン容疑者を受け入れないよう要請。同容疑者が入国した場合は国外に退去させるよう求めたことを明かした。また、同容疑者が通過する可能性のある国に対しても、通過を認めないよう要請したとのこと。
6月24日
スノーデン容疑者が中米エクアドルに亡命を申請。同国の外務省などが明かした。スノーデン容疑者のパスポートはすでに米当局の措置によって失効しているが、告発サイト「ウィキリークス」によると、スノーデン容疑者は米政府の訴追を受けた後、それまで潜伏していた香港を離れ、外交関係者などの付き添いのもと、安全なルート経由でエクアドルに向かっていると伝えた。
また同日、ロシアのプーチン大統領はスノーデン容疑者がモスクワの空港に滞留していることを明かした。同大統領は米ロ間に犯罪者の身柄引き渡し協定がなく、また、同容疑者がロシアで犯罪をおかした事実もないとして、米国の要求には応じない姿勢を示した
6月25日
この文書は暗号化されて「複数の人」に送られており、スノーデン氏に何かあると公開されると報道される。
6月28日
ロシアの空港にいるとされるスノーデン容疑者だが、ロシア側が同容疑者を米国側の要求に応じない考えを示したことを受け、オバマ大統領は同容疑者の身柄受け渡しのために特別な措置を講じないことを表明した。
ロシアの「駆け引き」に応じない姿勢を示した米国だが、同容疑者をめぐる両国間の取引は、これからさらに複雑化しそうだ。