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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第125回

volcaシリーズ企画開発者インタビュー第2弾

KORGのシンセは奇跡と最高密度の設計によって作られた

2013年06月29日 12時00分更新

文● 四本淑三

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先輩エンジニアが実験中の回路を採用

―― こっちのフィルターの方が歪みは少ないということですか? レゾナンスを上げると相当すごいですけど。

高橋 いや、歪みが少ないのはレゾナンスがオフのときです。フィルターってカットオフを開き切っていても、どうしてもフィルターの癖みたいなものが出るんですが、それがすごく少ない。

坂巻 だから音色の変化が大きいと思うんですよ。フィルターはハイをカットする回路なので、つなぐと音がどうしても眠くなるんですけど、こいつは開き切っているとオシレーターの原波形にかなり近い音がしますし、ピークを上げていったときの歪み方はすごくいいし。

―― 700Sの回路を使うことにしたのはなぜですか?

高橋 たまたまなんです。西島さん※4が実験をやっていたんですよ。フィルターって結構バラつきがあって、大変なんです。バラつくと量産コストも上がって、使いにくい回路が世の中には多いんですけど。「この回路は安定しているから」みたいなことで。

―― 西島さんが試していたフィルターがあったんですね。

高橋 はい。まだブレッドボードの状態で。それを借りてつないでみたら、「すげえいいじゃん!」って。むしろ探していたのはこれだったかも、みたいな。で、これの試作が上がってから、坂巻さんが「やっぱ良いわ」ってずっと言っていて。

坂巻 お上品というわけではないんですけど、MS-20っていい意味でがさつな音がするじゃないですか。こいつはすごい落ち着きがあって、歪み方もちょうどいいんですよ。とにかく開き切ったときの抜けがいいし。

―― 700Sのフィルターは、最近出たアナログものには入っていなかったんですか?

坂巻 はい。アナログの実験自体はずーっと社内でやっているわけですよ。高橋くんのいる部署もそうですし、MS-20 miniを作ったチームもそうだし。それが、お互いに情報交換していて、たまたまこれを使おうということになって。700Sのフィルターって面倒くさいんですよ。特性の揃ったペアの部品を使う必要があるんですけど、それが安価に手に入ることが分かって。このフィルターの音がいいのは前から分かっていたんですけど、そのおかげで実際の製品に使えるようになった。それが一個の奇跡かなと。

※4 オリジナルMS-20の開発者にして、その精巧な復刻版をMS-20 miniとして復活させた西島裕昭さん。

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