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インテル、vProの進化とUltrabook導入事例を披露

iPadをやめた造船会社、Ultrabookを選んだ医療現場

2013年06月28日 08時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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人を見る看護のために最新Ultrabookを選定

 一般財団法人 名古屋市療養サービス事業団も、Ultrabookをいち早く導入した組織の1つだ。同事業団の課題は、やはり人材確保と業務の効率性だ。

 名古屋市療養サービス事業団 在宅療養部 訪問看護課長の近藤佳子氏によると、人口構成比が大きく変わりつつある日本では、多死時代の到来を迎え、介護機関や医療機関が不足する状況にあるという。実際、2040年には約49万人分の看取りの場所が不足する見込みとなっており、自宅での死亡を前提とした、訪問看護への期待は大きい。

名古屋市療養サービス事業団 在宅療養部 訪問看護課長 近藤佳子氏

 注目は訪問看護ステーション自体は微増しているのに対し、人材確保は困難な状態になっている点だ。「医療機関の訪問介護数が減少しており、とにかく人が足りない」(近藤氏)。こうした背景から少ない人材と時間で効率的に業務を回す体制が必要になっており、ここでITの活用が重要になってくる。訪問看護では訪問滞在時間とほぼ同程度の時間が、準備、移動、記録、ケアカンファレンスに費やされており、これを短縮する必要があるという。

 これを実現するために作られたのが、「SCS21(Smart Care System 21)」と呼ばれる統合訪問看護業務支援システムだ。SCS21は利用者情報登録やスケジュール、報告書、勤怠などの管理のほか、実際の訪問看護を記録することで、実績報告や請求に活かすことができる。会場では同事業団 IT統括本部 主任の篠田和紀氏が実際のデモを行なった。

統合訪問看護業務支援システム「SCS21(Smart Care System 21)」

 しかし、こうしたシステムを利用する端末に関しては、慎重な選定が必要になる。たとえば、病院の電子カルテが導入された当初、「医者が患者を診ずにパソコンの画面ばかり見ている」といった批判が巻き起こった。利用者宅に1人で行き、限られた時間で処置を行なう訪問看護師にも起こりえる問題で、「やはり人を見なければ、適切な看護はできない」というのが結論だ。

 名古屋市療養サービス事業団では、SCS21の開発段階で、人を見る看護を可能にするデバイスの選定を本格化させており、iPadやAndroidタブレットやネットブック、第一世代のUltrabookを検討したという。その結果、キーボードのないタブレットや、性能面で難のあるネットブックは不採用。Windowsアプリケーションを動作させる必要があったため、キーボード着脱式のAndroid端末も選考から漏れた。その結果、薄い、軽い、速いといった特徴のほか、Anti-Theft Technologyによるリモートロックが可能な第1世代のUltrabookであるASUS Zenbook UX21Eの採用に至ったという。2011年のUltrabookの導入は、インテルからも先進的な事例として紹介された。

第1世代Ultrabook導入までの経緯

 しかし、実際に導入してみると、人を見る看護のためのデバイスとして、クラムシェル型の形状には限界があることがわかった。そもそも立ちながらの記録が難しいほか、処置中にUltrabookを置く場所がない、紙のカルテの時でも現場ではバイタルサインや看護ケアのチェック程度で済む、もっと軽くしたいといった課題が浮き彫りになった。なにより入力に際してはどうしても意識がパソコンにいってしまい、「電子カルテ問題」が再来することになったという。

名古屋市療養サービス事業団 IT統括本部 主任 篠田和紀氏

 だが、その後Ultrabookも2世代目を迎え、Windows 8のようなタブレットに最適化されたOSが登場したことで、フォームファクターにバリエーションが生まれた。タブレット形状に変形するコンパーチブル型や、キーボード脱着型のデタッチャブル型は、「まるで訪問看護師のために生まれてきたよう」(篠田氏)だった。こうした機種であれば、現場ではタブレットとして使うことで視線を利用者に集中させ、オフィスではクラムシェル型PCとしてキーボードで文書作成を行なえる。状況に応じて使い分けられるわけだ。実際、同事業団では、コンパーチブル型の「Panasonic Let'snote AX3」やデタッチャブル型の「ThinkPad Tablet 2」を試験導入し、現場で使ってみているという。

訪問看護師のために生まれたような新型モデルたち

最新インテルCoreプロセッサーが本気のICT活用を支援

 こうした事例紹介の後、再度登壇した坂本氏は、医療機関や教育現場でのUltrabook、タブレットなどの導入状況を説明。名古屋市療養サービス事業団の篠田氏と「われわれ(のニーズや要望)が早かったのでしょうか?インテルさん(の技術や製品)が遅かったんでしょうか?」という話をしたことを振り返り、「われわれは遅かったかもしれない。お客様の方でいろいろなトライ&エラーを重ねてもらった。ようやくインテルとWindowsの進化で、ユーザーの期待に追いつきかけている」と語った。その上で、今年の後半に搭載される第4世代のインテルCoreプロセッサーでさらなる生産性の向上、新しい働き方のサポートなどが実現できるとアピールした。

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