電子書籍が花盛りだ。講談社や文藝春秋といった出版社だけではなく、LINEやくら寿司といった意外なプレーヤーもサービスの提供を始めている。その背後にあるのは、電子書籍への期待だ。
2013年度は、春から電子書籍関係のトピックが相次いだ。
まずは4月にLINEが「LINEマンガ」を公開。マンガを購入するとスタンプがもらえるなど、LINEならではの取り組みでユーザー数を伸ばした。開始から2ヶ月で200万ダウンロードを突破している。
5月には、講談社が「Dモーニング」をリリース。週刊コミック誌を雑誌とデジタルの両方で同時に配信する、史上初の試みとして話題を呼んだ。
そして6月には「くら寿司」が、店内で手塚治虫のマンガ全400巻を無料配信する「TEZUKA SPOT」を開始した。自分のスマートフォン(スマホ)やタブレットを店内のWi-Fiスポットに接続して閲覧する仕組みだ。
さらに6月下旬には文藝春秋が司馬遼太郎の「竜馬がゆく」を、山と渓谷社が月刊誌「山と渓谷」の電子配信を始める。老舗の出版社が、電子書籍市場に本格参入してきたわけだ。
これらのサービスが相次いで登場した背景には、電子書籍市場への期待がある。インプレスR&Dの「電子書籍ビジネス調査報告書2012」によると、国内の電子書籍市場は2012年に713億円、2013年には940億円になると予測している。
しかし意外なのは、現在の電子書籍市場の主流はスマホではなくガラケー向けという事実だ。
インプレスR&Dの調査では、2012年の電子書籍の市場規模予測629億円のうち、スマホやタブレットといった端末向けの市場はわずか294億で半分以下にとどまる。
日常でスマホを利用するようになると、周囲の人もみんな使っていると勘違いしがちだ。しかし、まだまだスマホは浸透しているとは言えない。
総務省の2012年通信利用動向調査によると、12年末時点でのスマホの世帯保有率は49.5%。iPhoneだGalaxyだと世間が騒いでも、まだこの程度というのが事実だ。
逆に言えば、だからこそスマホ向け電子書籍市場にはビジネスチャンスがある。富士キメラ総研の「2013 ブロードバンド・モバイルサービス総調査」によれば、2017年度の電子書籍市場はスマホ向けだけで1672億円を見込んでいる。
来る来ると言われてなかなか来なかった「電子書籍元年」。今年こそ大波が来る、かもしれない。
