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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第208回

x86だけでなくARMの市場を狙うAMDのサーバー向け戦略

2013年06月24日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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Kyotoの後継
「Seattle」(シアトル)

Seattleの概要。ロードマップ中は2014年後半からKyotoをこのSeattleで置き換えることになっているが、現実問題としては2015年中旬あたりまでは共存すると思われる

 最後がSeattleである。これは上の画像にもあるように、「Opteron X」シリーズの後継製品である。主要な特徴として以下の項目が挙げられる。

  • 8コア及び16コアの構成が用意される
  • メモリー容量は128GBをサポート
  • CPUは最大2GHz以上で動作
  • いくつかのアクセラレーター(暗号化と圧縮伸張)を搭載
  • 10GbEのコントローラーを内蔵
  • Freedom Fablicのコントローラーを搭載
  • ストレージコントローラーを搭載

 これをベースに内部を推定したのが下図である。

Seattleの構造図(推定)

 まずCPUコアは8ないし16とある。「Cortex-A50」シリーズの場合、4つのCPUコアと共有2次キャッシュ、AMBA I/Fなどを1つのモジュールとしてまとめることになるので、2つないし4つのモジュールが入ることになる。まだ不明なのは、ここでbig.LITTLE構成を取るか否かである。常時ある程度の負荷のかかるサーバー用途の場合、big.LITTLEにどれほどの意味があるのかは微妙なところで、全コアが同じ(Cortex-A57)構成の可能性もある。

 一方メモリーコントローラーであるが、最大128GBというメモリー容量からすると、メモリーは4chの可能性が高い。Kyotoが1chで32GB、Berlinが2chで64GBだから、128GBだとすると4chないとおかしいからだ。また、2014年後半はまだDDR3が主流だが、2015年だとDDR4に推移する可能性があるので、メモリーコントローラは両対応でないとまずい。

 このあたりはAMDも自社でノウハウは持っているはずだが、x86コアと組み合わせた場合はともかく、ARMコアとの組み合わせは初体験であり、色々試行錯誤している時間もない。なのでARMが提供する「DMC-520」(関連リンク)というDRAMコントローラーを利用していると推察する。

 これらを繋ぐのは、やはりARMが提供する「CCN-504」(関連リンク)という、システムオンチップ用のシステムインターコネクトだろう。CCN-504は最大16のプロセッサーとアクセラレーター、高速I/Oデバイスなどをまとめて繋ぐことができる。

 昨年の発表でAMDのLisa Sue副社長は「我々にはFabricの技術がある」と言っていたが、これはあくまでFreedom Fabric、つまりプロセッサー同士を繋ぐ技術の話で、プロセッサー内部のインターコネクトは対象外である。メモリーコントローラーと同様に、AMDはこれまでARMコアをインターコネクトで繋いだことはないから、ここもおそらくARMのインターコネクトを採用したものと思われる。

 ARMは現在AMBA 4ベースの「CoreLink CCI-400」(関連リンク)と、同じくAMBA 4ベースの「CCN-504」(関連リンク)を持っているが、CCI-400だと最大でも8CPUまでしか扱えないので今回の用途には不適当である。またARMは先日、64bit ARMプロセッサー向けに「AMBA 5」という新しいプロトコルを発表したが、こちらはまだ具体的な製品がないから、今回はCCN-504ベースであろうと想像される。

 10Gbitイーサネットに関しては、MAC(論理層)のみを実装、PHYはXAUIを利用して外部に接続する方法と思われる。

 少し悩んだのがPCI Expressだ。図ではPCI Expressを設けず、Freedom FabricやRAIDエンジンが直接CCN-504に接続されるという構成を示したが、実際はCCN-504からPCI Expressレーンが出て、これに内部的にFreedom FabricのコントローラーやRAIDエンジンが接続される構図になるかもしれない。後は暗号化エンジン(Crypto)や圧縮伸張エンジン(Compress)などのアクセラレーターが接続される形になるだろう。

 このSeattleがどのプロセスで製造されるのかが最後の疑問だ。GLOBAL FOUNDRIESであることは間違いなさそうで、しかもハイスピードではない模様だ。となると、28nm SLPか、28nm LPHのどちらかになる。一番ありそうなのは28nm SLPであるが、下の画像でもわかる通り28nm SLPは1.5GHz程度が一般的な上限としている。

GLOBALFOUNDRIESのウェブサイトから抜粋。同社は28nm世代で3種類のプロセスを用意している

 これは、最大2GHz以上というSeattleのスペックを満たすのにはやや厳しい。もちろんこうしたものは設計次第ではあるのだが、今回AMDはARMのアーキテクチャーライセンスではなくプロセッサーライセンスを取得しており、パイプラインの構造を変えるといったチューニングは出来ない。なので普通に考えると28nm LPHではないかという気がする。

 まだGLOBALFOUNDRIESは28nm LPHを使った製品の量産アナウンスを行なっていないが、ベースとなる28nm SLPに関しては既に製品出荷が始まりつつあり、そろそろ最初のアナウンスがありそうな時分である。AMDはこのSeattleの出荷を来年後半という比較的マージンを大きく取ったスケジュールにしており、よほどなにかとんでもない事が起きない限りはこのタイミングで出荷できそうに思われる。

 もっともAMD自身、Seattleですぐに市場が取れるとは思っていない。そもそもARMコアといっても、既存のARMのソフトウェア エコシステムは32bit環境のみで、現状64bitは皆無とは言わないものの、きわめて限られている。

 こうしたエコシステムが充実するためには、まず64bitに対応したARMコアと、この上で動く64bit対応OSが必要になる。それがあって、初めてソフトウェアやライブラリー、ツールの移植が目に見えて動き始めるわけで、現状は水面下で作業が多少行なわれている程度なのが実情だ。

 これが充実して、初めてサーバー向けのソリューション(ソフトウェアまで含めたパッケージ)が提供できるようになるわけで、それにはどうしても1年程度はかかるだろう。先に2015年中旬までKyotoが共存するだろう、と説明したのはこうした事情による。

 そんなわけで、当面ARMベースのOpteronはもっぱらベンダーや、一部の先進的なユーザー向けのみに、開発/テスト環境として出てゆく程度で、本格的な普及は2015年以降になると筆者は予想している。

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