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2014年に4Kテレビ試験放送開始、8Kテレビは2016年試験放送

4K/8K放送の実現を目指す「NexTV-F」が設立会見

2013年06月17日 22時00分更新

文● 大河原克行

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 4K/8Kなどの次世代放送の実現などを目指す一般社団法人次世代放送推進フォーラム(NexTV-F=Next Generation Television and Broadcasting Promotion Forum)が5月2日に設立し、5月7日に一般社団法人として登記が完了。このほど、同フォーラム関係者が記者会見を行なった。

次世代放送推進フォーラムは、NexTV-Fが略称となる

次世代放送推進フォーラムの幹部および理事

展示されたNHKの8Kテレビ

8K撮影用のテレビカメラ

超小型スーパーハイビジョンのカメラヘッド

シャープが発売している4Kテレビ

須藤修理事長

 次世代放送推進フォーラムの須藤修理事長は、「フルハイビジョンの4倍も高精細な4Kテレビを2014年に、16倍高精細な8Kテレビ(スーバーハイビジョン)を2016年に試験放送を開始する。

 東京都が名乗りを上げているオリンピックが開催される2020年には、多くの視聴者に放送サービスを楽しんでもらうという大きな目標を掲げ、これにオールジャパンで取り組んでいくことが示された。

 5月下旬に行なわれた総務省の放送サービスの高度化に関する検討会の最終会合を傍聴した韓国の研究者から、オールジャパン体制と聞いて感激したといわれた。日本が誇る最先端の放送、ネット、家電の技術を生かして、世界で最も速く、最も高度な放送サービスを実現することを通じ、日本の放送文化/映像文化の一層の向上を図る。これは国民生活を豊かにするとともに、日本の産業競争力を強化することにもつながる。

 放送やVODなどが大きく飛躍するととともに、高精細なスクリーンによるユーザーインターフェースの向上や、高齢者社会における公共サービスの利便性向上のほか、様々なビジネス活動にも波及効果ほをもたらすと期待している。世界における次世代のテレビ映像分野の標準となる技術、コンテンツ制作、サービスモデルを日本から発信していくことが国際貢献と日本の自信につながる」などとした。

総務省・柴山昌彦副大臣

 また、総務省・柴山昌彦副大臣は、「総務省は、次世代放送に関して『誰が』『いつまでに』『何をしなければいけないのか』といったロードマップをまとめて公表した。ここでは、関係者の知恵を結集し、4Kと8K、スマートテレビが一体となって着手するなど、思い切った内容となっており、国のIT戦略にも明記された。次世代放送の推進にかける意欲と決意に敬意を表する。

 放送分野で世界をリードできることはもとより、放送コンテンツを楽しむ娯楽だけでなく、医療や機械設計、防犯などの幅広い分野に展開が可能であり、大きな波及効果を期待している。次世代放送推進フォーラムは、オールジャパンで推進することが重要である。平成24年度の補正予算の事業を本フォーラムに委託することを決定している。課題が発生すれば、総務省は一緒になって課題解決に取り組み、支援する」などと語った。

 地上放送および衛星放送事業者が9社、CATV事業者が1社、通信事業者が3社、テレビメーカーが6社、商社および広告代理店が2社の関係企業21社が参画。理事長には、東京大学大学院教授・情報学環長の須藤修氏が就任。副理事長には、公共放送、民放、メーカー、通信の4分野からそれぞれ選出。松本正之氏(=日本放送協会会長)、井上弘氏(=日本民間放送連盟会長、東京放送ホールディングス会長)、平井一夫氏(=ソニー社長)、片山泰祥氏(=日本電信電話副社長)が就任した。また、名誉会長には、渡辺捷昭氏(=日本経済団体連合会 前情報通信委員長)が就任した。

松本正之副理事長

井上弘副理事長

平井一夫副理事長

片山泰祥副理事長

渡辺捷昭名誉会長

次世代推進フォーラム運営委員会委員長の久保田啓一理事

 同フォーラムの設立目的は、「4K/8K、スマートテレビなどの次世代放送サービスを早期に実現するために、送信や受信に関する規定や仕様の検討、実証および試行的な放送などを行ない、放送サービスの高度化を促進し、利用者の利便性向上に寄与する」こととし、「次世代放送サービスに関する技術仕様の検討、検証、評価、実用化に向けた実証や試行的な放送、サービスの開発、普及、利用促進、周知広報など」を事業とする。

フォーラムの概要

設立時社員

 参画したのは、KDDI、シャープ、ジュピターテレコム、スカパーJAST、住友商事、ソニー、ソフトバンクBB、TBSテレビ、テレビ朝日、テレビ東京、電通、東芝、東北新社、日本テレビ放送網、日本電気、日本電信電話、日本放送協会、パナソニック、富士通、フジテレビジョン、WOWOWの21社。

 事業計画の立案および事業全般の管理、統括を行なう運営委員会の下に、技術検証や実証計画策定と実施、システム設計や標準化対応を行なう技術委員会、番組編成やコンテンツ制作、番組調達、設備の貸出などを行なうコンテンツ委員会、周知活動や広報活動、報道発表などを行なう周知広報委員会で構成。次世代放送サービスの実用化に向けたテストベッド事業に関しては、4K/8Kに対応した制作、放送システムのテストベッドの構築と運用規定の策定に向けた検証、映像符号化方式HEVCを採用したリアルタイム圧縮符号化装置にかかわる仕様などの検討、関連企業、団体や国内標準化機関との連携による運用規定などへの貢献と4K/8K関連技術の普及展開を行なうという。

組織概要

4K/8K HEVCエンコーダ開発体制

NTTが出展したHEVC FPGAボード

 同フォーラムでは、4Kコンテンツの制作、送出システムの貸出を行なうほか、MPEG2エンコーダLSIについては、2014年度末にはエンジニアリングサンプルを完成させる考えだ。

NTTが展示したMPEG2エンコーダLSI

 また、将来4Kテレビを購入したユーザーが、8Kの放送を視聴できるようにするほか、現在のフルハイビジョンテレビで4Kや8Kの放送を視聴できるようにすることを示し、世代が変わるごとにテレビを買い換えなくても済むようにすることなども強調した。なお、ここでいう8K放送の視聴は、8K放送を受信しても、4Kテレビでは4K画質、フルハイビジョンテレビでは、フルハイビジョン画質にダウンコンバートされて視聴することになる。

 松本正之副理事長は、「人間の目の限界に匹敵するきめ細かさ。8K以上は技術的には可能だが人間が識別できないことから、8Kは究極のテレビとなる。ロンドンオリンピックのハブリックビューイングでは圧倒的な臨場感を実現した。2016年のリオデジャネイロのオリンピックではスーパーハイビジョン(8K)の実用化試験ができるように関係者と協力したい」とコメント。井上弘副理事長は、「スーパーハイビジョンは、日本の国際競争力という観点でも重要なテーマ。今年は、放送開始から60年を迎え、技術進化とともに視聴者に届けるサービスを向上させてきた。今回のスーパーハイビジョンがサービス向上につながるように努力していく」とした。

 平井一夫副理事長は、「高精細、高機能な放送サービスを期待している視聴者に対して、世界に先駆けて提供できる。高精細、大画面は感情を揺さぶって、感動を増幅させるものになる。ソニーは受像機のみならず業務用カメラや放送機器など幅広く展開していく」と語った。片山泰祥副理事長は、「オールジャパンによる4K/8Kの普及促進、日本の国際競争力強化、豊かな映像文化の創出に向けて取り組むことに責任を感じている。衛星だけでなく、光ネットワークも伝送路として有効であり、検討会ではIPTVも盛り込まれた。より多くの人に新たなサービスを提供できる環境が整い、医療や防災、減災といった社会問題の解決などにも寄与できる」とした。

 また、片山副理事長は、NTTの立場からも言及。「4K/8Kの普及においては、エンコーダLSIの開発が重要であり、NTTは、映像の符号化技術に関しては、20年に渡り研究してきた経緯がある。だが、4K/8KのエンコーダLSIの開発は1社ではなく、国の支援を得て、オールジャパンで進めることになる。グローバルでのナンバーワンチップとしての開発を目指したい」と語った。

 一方、渡辺捷昭名誉会長は、「次世代放送推進フォーラムには、4K/8Kの高精細映像サービスの提供、スマートテレビによる放送と通信の連携によるサービスというふたつの目的がある。これをクルマの両輪として取り組む必要がある。安倍内閣のIT戦略には次世代放送サービスの実現が盛り込まれ、世界に先駆けてこれに実現することで、新産業、新サービスの創出、国際競争力の強化につながり、成長戦略を牽引するものと考えている」と語った。

 なお、須藤理事長が座長を務め、2012年11月からスタートしていた総務省の「放送サービスの高度化に関する検討会」では、4K放送や8K放送、次世代スマートテレビのサービスの実用化に向けて、「オールジャパン」で推進することが望ましいとの提言を行なっている。さらに、2013年には4K/8Kテストベッド構築および検証を行ない、2014年には同検証結果を活用し、関心を持つ視聴者が4Kを体験できる環境、2016年には関心を持つ視聴者が8Kを体験できる環境を整備。2020年には希望する視聴者がテレビによって4K/8Kの放送を視聴可能な環境整備を行なうことをロードマップとして示している。

 これにより、「国際社会における映像文化の発展を牽引し、放送関連産業の国際競争力強化につなげる」という。

「放送サービスの高度化に関する検討会」でのロードマップと事業概要

次世代衛星放送テストベッド事業の概要


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