特徴あるデザイン、そして艶やかで包み込まれるサウンド
真空管のサウンドをポケットに、「Carot One」のポタアンを聴く (2/3)
2014年07月09日 17時00分更新
コンパクトで、ほかにはないオレンジと青のカラー
しっかりとした箱の中に収められたNIK58-TUBEを見てみよう。
まずは本体から。サイズは幅58×奥行き85×高さ23mmと比較的小型。直方体の本体に音量調整用のつまみが飛び出たシンプルな形状で、サイズはAstell & Kernの「AK100」などとそれほど変わらない。削りだしのアルミ合金製フレームをアクリルパネルでふたをしたような構造になっている。オレンジと青の補色を大胆に組み合わせた色使いはイタリアブランドならではと感じる。同社のカナル型イヤフォン「TITTA」とも調和が取れた色だ。
真空管はアクリルパネルに設けられた小窓から確認できる。フィリップス製のサブミニチュア管(6111)を使用しており、スペック表には振動などにも配慮した軍用規格品「JAN6111WA」という記載がある。使用時にはこの真空管がオレンジ色に光るが、これはLEDでライトアップされたもの。あくまでも雰囲気だけだが、真空管を使っているというイメージがわきやすい演出となっている。
NIK58-TUBEの内部を確認できなかったため、回路については詳しく分からないが、市場で一般的な真空管ポタアンは、真空管とオペアンプを組み合わせたハイブリッド型となっており、おそらく本機もそれに順ずるだろう。
入出力端子は上部に直径3.5mmのアナログ入力端子とヘッドフォン端子のみ。底部にMicro-USB端子を持つがこれは内蔵バッテリーを充電するためのもの。USB DACなどの機能は持っていない。国内版パッケージには、同じ輸入代理店のユキムが取り扱っている、独AVINITYのショートケーブルが付属する点も注目だ。
使用方法はケーブルをつなぎ、つまみを回すだけとシンプルで特に悩む要素はない。ただし真空管のウォームアップには多少時間がかかるので、電源オンから10秒程度待ってから使用する必要がある。対応するインピーダンスも16~300Ωとかなり余裕があるので、(変換プラグが必要だが)ゼンハイザーなどのスタジオ用ヘッドフォンも十分に駆動できるだろう。
連続再生時間はバッテリーをフル充電して約3.5時間。少し短く感じる読者もいるかもしれないが、真空管ならではの音質を楽しみたいという読者であれば、それを上回る魅力を感じるはずだ。真空管は衝撃に弱く、発熱も多いため、「持ち運びが心配」と感じるユーザーもいるかもしれない。実際発熱はあり、傷つきやすいので衝撃もなるべく避けたほうがいいと思うが、扱いにはそれほど神経質になる必要はなさそうだ。
底部にはサウンド・フィールドを切り替えるためのスイッチもある。標準的な「8の字特性」に加え、「ひさご形特性」が選べる。曲や好みに合わせて選べばいいが、ひさご型特性では個々の音の描き分けはマイルドになる一方で、より広い空間に没入する感覚が得られるので、ソースによっては真空管ならではの魅力をよりいっそう実感できるのではないかと思う。
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