アップルへの対抗意識が満々
先に触れたコメントからもわかるように、対抗製品にあげたのは、アップルのiPadだ。実は、樋口社長はかつてアップルにも在籍した経験がある。
「Surface RTはiPad対抗の製品。それに対して、Surface Proは、Windows陣営を盛り上げるための製品」と、樋口社長は位置づけ、それを明確にするように、Surface RTを「PCのようなタブレット」とし、Surface Proを「タブレットのようなPC」と表現する。今回は、Surface RTだけの価格改定としたのは、タブレットに対抗する領域でのテコ入れという狙いがあるからだ。
アップルは、5月31日に円安を背景に価格上昇に踏み切っている。
iPad miniは、32GB版が3万6800円から4万2800円へと6000円の値上げ、64GB版が4万4800円から5万2800円と8000円の値上げ。また、第4世代iPad Wi-Fiモデル 32GB版では、5万0800円から5万9800円へ9000円の値上げ、64GB版が5万8800円から6万9800円へと1万1000円の値上げとしている。
両社の価格改定が行われる前は、iPad mini 32GB版は、Surface RTの32GB版に比べて1万3000円安く、第4世代iPad 32GB版ではSurface RTに比べてわずか1000円高いという状態だった。
それだけに、日本マイクロソフトが、Surface RTの対抗がiPadであると宣言しても、説得力に欠けていたのが実態だった。先行するiPadに対抗するだけの価格戦略にはなっていなかったからだ。
円安なのでアップルはiPadを値上げしましたが、MSは……
しかし、今回の価格改定によって、この状況は大きく変わることになる。
「あっち値上げをするならば、こちらは値下げをする。『目には目を』ではなく、『目には歯を』の戦略だ」と樋口社長は語る。
日本マイクロソフトが、この施策を決定したのは、5月31日のアップルの値上げを見てからだという(関連記事)。そして、この施策は、日本独自の施策として実施するものだという。
「当社は、タブレットの分野ではチャレンジャーであり、チャレンジャーはチャレンジャーなりの戦略をとる必要がある。アップルが値上げしたことによって、タブレットの購入を躊躇しているユーザーに対して、飛びついてもらえる価格とした。魅力あるプライスポイントによって、Surface RTのバリューを訴求していく」と語る。
新価格によって、これまでに比べて、2~3倍程度のSurface RTの販売増を見込んでおり、それに向けて「安定的に商品を供給できる」と、準備は万端だ。また、キャンペーンが終了する7月15日以降についても、「新価格での販売状況をみて、その後の取り組みについては改めて検討したい」とする。
Surface RTの新価格によって、iPadの牙城にどこまで迫ることができるだろうか。
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