Apple、Googleがカーナビ業界に侵攻しつつある。迎え撃つ日本のカーナビ業界は、どのような戦略をとっているのか。生き残りの鍵を探る。
6月10日に米国で開催されたAppleの開発者向けカンファレンス「WWDC 2013」。
その壇上で、iPhoneやiPadを車載モニターと連携させ、カーナビやハンズフリーフォンとして使える新機能「iOS in the Car」が発表された。
その翌日、今度はGoogleがイスラエルのソーシャルカーナビゲーションアプリ開発会社「ウェイズ」を買収した。
Googleは2013年1月にも、アウディにカーナビ用地図を提供すると発表し話題を呼んだ。いつの間にか、スマートフォンの両雄がカーナビ業界の背後まで迫ってきているのだ。
実は矢野経済研究所の2012年の市場調査に、その予兆が現れていた。同研究所は、PND(小型のポータブルカーナビ)の出荷台数が、2015年には2011年の7割程度まで落ち込むと予測している(「世界のカーナビ/PND/DA市場に関する調査結果 2012」、2012年7月25日発表)。
それでは、日本のカーナビメーカーはスマホにどう対抗しようとしているのか。
スマホをマネずに独自性を活かせ
日立グループのカーナビメーカー・クラリオンは、フリック操作に対応したカーナビ「NX613」をリリース。専用アプリをダウンロードしたiPhoneを接続すれば、スマホと同じようにラジオやYouTubeを再生するアプリをカーナビで利用できる。
「スマホに勝てないなら、いっそ丸ごと取り込んでしまえ」という発想は斬新だが、できることは結局スマホと同じ。それならカーナビを使う理由がない。
一方で、ひと工夫加えているのがアルプス電気グループのアルパイン。スマホと連携できるのはクラリオンのカーナビと同じだが、家族向け機能を盛り込んでいるのが特徴だ。
アルパインの「ビッグX EXシリーズ」はミニバンなどの車種専用カーナビ。
スマホの専用アプリ「アルパイン 家族のおでかけ検索」でおでかけスポット情報をカーナビに転送できる。行きつけのチェーン店を設定しておき、周辺検索で探すことも可能だ。
また、業界最大の9インチモニターを用意し、車の天井に別売りのモニターを設置すれば、前部座席でナビをしつつ後部座席でDVDを再生するなど使い分けられる。
シリコンバレー発のスマホカーナビに立ち向かうには、アルバインのように特定車種に特化し、ファミリー層のニーズに徹底的に応えるなど、独自の付加価値が必要だ。
実はクラリオンも、to B向けに危険運転を回避するための運転管理機能を組み込んだ、野心的なカーナビを発表している。急ブレーキやスピード超過といった危険運転を関知し警告を発する仕組みで、スマホだけでは到底不可能なシステムだ。
何でも屋のスマホとは違い、カーナビはまさに専門職。自動車との密な連携にこそ、ビジネスの光明がある。