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[解説] Googleが問題視する「設定が不適切なスマートフォン向けサイト」とは

2013年06月12日 20時15分更新

記事提供:SEMリサーチ

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関連記事「Google、スマホ向け検索ランキング変更を発表 - 不適切な設定を行うスマホサイトが対象」もあわせてお読み頂く前提で、ここでは Google が問題視する不適切なスマートフォンサイトの定義について解説します。

本件に関してCNET Japan さんが記事にされている「グーグル、スマホ対応が不適切なサイトの検索順位を引き下げへ」の説明が適当すぎる上に見出しが誤解を与えているような印象がありますので、勘違いしている方々の助けになれば幸いです。

Googleが問題視する不適切なスマートフォン向けサイトとは

今回 Google が予定しているランキング変更により影響を受ける可能性がある"誤った設定のスマホ向けサイト"とは、具体的に次の3つのケースです。

  1. スマホユーザーがデスクトップ向けサイトを訪問した時に、関連性が低いページにリダイレクト設定しているサイト
  2. スマホユーザーがデスクトップ向けサイトにアクセスした時のみ、エラーを返すサイト
  3. スマホユーザーがアクセスした時のページ読込速度が著しく遅いサイト

つまり、技術的な設定に誤りがあるために、スマホユーザーの検索体験が著しく損なわれるケースに限定されています。ツイートを見ていると、スマホスクリーンに適したページを用意していないサイトの検索順位が落とされるとか、PC向けしか用意していないサイトの順位が落とされると勘違いされている方がいるようですが、それらは全く本件とは関係ありません。本件は、技術的な設定の誤りによりユーザーが不自由を強いられるケースに限定されています。


優れた検索体験とは:検索意図と関連性

検索体験について、少し詳しく説明しましょう。

例えば、検索キーワード「キヤノン デジカメ」と入力する人は、きっとキヤノンのデジタルカメラを探しているに違いないでしょう。同様に「Nikon D800」と検索した人は、ニコンのデジタル一眼レフでも特定機種・D800に関する情報を探していることでしょう。くどいですが「品川 マンション 購入」と検索した人は、マンション購入を検討していて、品川付近を検討しているでしょう。

検索は、何らかの情報が欲しいと思った瞬間に初めて生まれる行動ですから、いいかえれば、すべての検索には何らかの意図 -- 探している事柄・目的 -- が存在します。これを検索意図と呼ぶのですが、優れた検索エンジンは、その検索意図(検索者が手に入れたい情報)を把握して、それに合致した、関連性が高いページにユーザーを誘導することが求められます。

先の例でいえば、「キヤノン デジカメ」と検索したユーザーにはキヤノン公式サイトのデジカメ総合ページや、あるいは通販サイトのキヤノンのデジタルカメラコーナーに誘導出来ることが検索エンジンの役割です。もしも、「キヤノン デジカメ」と検索したユーザーの検索結果上位に日立の冷蔵庫やダイソンの掃除機のページといった、検索意図とかけ離れた関連性が低いページを表示しようものなら、そんな検索エンジンは”使えない”わけです。


検索意図を反映しないリダイレクトは、検索体験を損ねる

ここで本日の Google の発表の話に戻りましょう。Google が問題視しているのは、ウェブマスター側の技術的な設定不備により、「キヤノン製のデジカメを探しているユーザーを総合通販トップページに誘導してしまう」状態を招いているサイトが対象です。デスクトップ向けのあらゆるページが、スマホからアクセスするとスマホ版トップページに誘導されてしまうという状況は、キーワードの検索意図を無視して勝手にスマホ向けサイトの入り口に誘導してしまうことを意味します。こんな状況は、検索している側からすれば不満が募ると共に、"使えない検索エンジンだな" という印象を持ってしまうわけです。

つまり、検索意図を無視してあらゆるアクセスをトップページにリダイレクトしてしまうような技術的に間違った設定をしたスマホ向けサイトを検索上位に表示してしまうことは、モバイルウェブにかかわる全ての当事者 -- 検索者、サイト運営者、そしてGoogle -- みんなが不幸な状態です。こうした状態を改善するために、Google はウェブマスターに正しい設定をお願いすると同時に、技術的に不適切なスマホ向けサイトは上位に表示しないようにしますという計画をアナウンスすることになったのです。


スマホからの訪問にエラーを出すサイトは上位に表示すべきでない

以上の話から、まず「あらゆるアクセスをスマホ向けトップページにリダイレクトしてしまう」技術的設定の不備を抱えるスマホ向けサイトを Google が嫌がる理由はおわかりいただけたでしょうか。次に、エラーについてです。

私が観察する限り、通販系サイトによく見られる技術的な誤りなのですが、特に商品一覧ページなど、サイト内検索システムが絡んでいるケースにおいて、スマホからアクセスすると404 Not Found をはき出すページが少なくありません。スマホ検索ユーザーの立場からすれば、たとえば「グッチ バッグ」と検索して、該当する検索結果をクリックしてエラーが表示されたら、当然イライラするわけです。これまた「使えない検索エンジンだな」という感想を持つでしょう。こうした理由により、技術的な不備によりスマホからのアクセス時にエラーをはき出すサイトも、検索順位が上位に表示されないようにすることで検索者の不利益を最小限に抑えようとするわけです。


ページ読込速度が遅いスマホ向けサイト

これは6月11日(米国時間)に開催されたSMX Advanced にて発表された内容です。最近の100Mbpsを超える光ファイバー接続やCATVネット接続と比較すればまだまだ実効速度が遅いモバイル環境において、検索中にユーザーを長く待たせることは、あまり好ましいことではありません。スマホ向けサイトの設定によっては、スマホ端末からアクセスした際にページ読込がとても遅いサイトが存在するのですが、そうした快適な検索体験を提供できないサイトも、やはり検索上位に表示するのは控えるようにしましょうということです。


スマホ向けサイトが用意されていないことは問題ではありません

誤解をしている方がおられるようですが、デスクトップ向けサイトしか用意していない場合、本件の影響は受けません。技術的な不備により検索意図と関連性が著しく低いページに転送されたりエラーをはき出されるページに到達するよりも、デスクトップスクリーン前提とはいえ検索の関連性が高いデスクトップ向けページにアクセスできるほうが、遙かに優れた検索体験を享受することができるからです。

スマホでタップしやすいボタンが用意されていないと検索順位が下がるということもありません。スマホ向けのサイトを別途用意していないと順位が下がるということでもありません。何度も繰り返しますが、本件は「技術的な不備により、関連性が低いページにユーザーを誘導してしまう設定が行われているスマホ向けサイト」が対象となります。


スマホ向けサイトを持つと順位が上がるの?

今回は、以上の話に該当する技術的不備を持つスマホ向けサイトは、「下方修正」という形で本来表示されるべき順位よりも下の方に表示されます。これは決して、スマホ向けサイトを持っていると順位が上がるという話ではありません。技術的に正しい設定を行っているスマホサイトは、そのサイトの評価通りの検索順位になりますが、決してプラスの加点があるわけではありません。


PCからの検索ではどう影響するの?

今回は、技術的に誤った設定を行っているスマホ向けサイトについては、『スマホから検索した時の検索結果画面で』順位が下がるようにします。つまり、PCから検索した時には全く関係がありません。

スマホユーザーのユーザーエクスペリエンス向上を目的としていますので、スマホからGoogle検索した時に、条件に合致する(技術的にまずいスマホ向けサイト)の順位調整を行うようにします。UXの改良の話なので、PCからのアクセス時には関係ないお話なのです。

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