ネットに現われた「差評師」という新しい職業
淘宝網の「悪意評価定義」においては、「購入者の不合理な要求や脅迫、別の第三者による書き込み、評価の書き込み欄で個人情報を書き込むなど、悪評を書いて不当に利益を得ようとする悪意評価については、通報とともにチャットのログなどを提出することにより、悪評と判断されたものは日中はなるべく早く、夜間は24時間以内に対処する」としている。
「悪評を書いて利益を得る」ことを生業とする人がいる。彼らは「差評師」と呼ばれるWeb 2.0時代の新しい職業であり、差評師のプロが集まってグループ化することもある。
その目的はライバルショップが差評師に働きかけて、ECショップに難癖をつけつつ、値引きさせて購入する(その後それを転売する)こともあれば、差評師が自発的に動き、1つの評価の影響が大きい立ち上がったばかりのECショップに難癖をつけて脅し、ショップからお金を徴収することもある。
差評師の収入は1件の悪評作成に対し数十元~数百元程度(1元=16円)とされ、1ヵ月で1万元~3万元程度稼げるという。先日発表された所得の高い北京の平均収入が5000元強だったので、結構稼げる仕事となっている。
中国政府も対策を講じはじめる
そんな差評師の職業化に政府が動き出した。昨年9月に湖南省長沙で差評師グループ12人を逮捕し、今月裁判が開かれた。いずれも中国初の案件となる。
逮捕された差評師は被害者となったショップで販売されている0.4元の筒を何個か連続で購入し、「それぞれEMSで送れ」と無理難題を要求。最終的に折れたショップ側が謝罪料として325元を差評師に支払ったとされる。
1グループ捕まったとはいえ、まだまだこれは氷山の一角にすぎない。自衛を意識する淘宝網のショップオーナーたちは、掲示板などでそれぞれが知恵を出し合い、情報交換を行なっている。
その結果「評価は星1つではなく星3つくらいという、微妙な点数をつけてくる。気をつけろ」「差評師は商品を買って届いてから連絡しないのもいる。とにかくチャットでも電話でも連絡をとれ」「在庫の有無を聞かず、いきなり商品の品質の質問や値引きを相談する客や、費用の高い宅配会社を指定してきたら差評師の可能性が大」といったログが積み重なっている。
また淘宝網は星5つが突然大量につけられるなどの不当な高評価には対応していたが、加えて上述の差評師対策を行ないはじめた。
クチコミサイトをはじめ未対応のサイトは多いが、アプリの悪評対策を行なうアプリストアも登場するなど、全体では徐々に対策がとられつつある。
利用者を信用することを前提でシステムが成り立っている日本と異なり、中国の人間不信のバックグランドから生まれた対人間不信のシステムの積み重ねはすごく、この辺に関しては中国のサイトから学ぶことが有るのではないだろうか。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D)。
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