6月6日、EMCジャパンはSoftware-Defined Storageの新プラットフォーム「ViPR(ヴァイパー)」を発表した。同社のグループ企業が見せる、互いを縛らない“緩やか”なつながりと同様、ViPRはサードパーティのストレージもコモディティ製品も仮想環境もつながる、オープンな仮想ストレージプラットフォームになる。
選択肢があるという自由を提供するViPR
マムシやガラガラヘビのような毒蛇(Viper)というよりも、軽い“甘噛み”で多様なベンダー製品をAPI接続で受け入れ、ユーザーに自由なストレージの選択肢を用意する。今年5月開催の「EMC World 2013」の目玉として発表されたEMCのViPRは、、そんな囲い込みをしないオープンなアーキテクチャだ。
技術的な詳細は、弊誌編集長の大谷イビサが「ひとりで7本も記事書いた自分を褒めたい」ともらしていた一連のイベントレポートを参照していただきたい。
簡単に説明すると、ViPRはコントロールプレーンとデータプレーンで構成される。コントロールプレーンは、物理ストレージ群を仮想化してプール化し、自動化された柔軟なプロビジョニングを実現。データプレーンは、ブロックストレージやファイルストレージ、オブジェクトストレージをデータサービスとして提供する。これをVMware仮想環境で統合的に運用する。もちろん、Hyper-VやOpenStackとも連携可能だ。ストレージを抽象化することで、アプリケーションから見たときにストレージを意識せず利用できるようになるのがメリットといえる。
物理ストレージは、EMC製品にこだわらない。他社ストレージ製品はもちろんのこと、ドライバを作成してコモディティ製品を接続させることも可能だ。「昨今のアプリケーションやサービスは数も種類も膨大で、これを支えるには垂直統合ではなく水平展開が重要となる」と、EMCジャパン 代表取締役社長 山野修氏は述べる。
とは言うものの、EMCでもAtmosやIsilon、VNX、VMAX、といったストレージ製品や、Avamar、NetWorkerなどのバックアップ製品など、I/Oスピードや容量、求めるSLAに応じた幅広い選択肢を用意している。ワークロードに見合ったストレージを適材適所で選ぶとき、EMCのラインアップの競合優位性が色褪せることはないという計算もあると見られる。
GEも共同出資するPivotal日本法人は
今年後半に設立予定
こうして構築されたプラットフォームは、2013年後半に日本法人の設立が予定される、EMC、VMware、GEの共同出資会社「Pivotal」によって、さらにメリットが引き出される。
Pivotalは、オープンソースのPaaSソフトウェア「Cloud Foundry」、データウェアハウス製品の「Greenplum」やデータ管理製品「Gemfire」、オープンソースのJavaフレームワーク「Spring」、ビッグデータ分析などのサービスを支援する「Pivotal Data Science Labs」や「Pivotal Labs」を提供する。単体だけでなく、すべて組み合わせてアプリケーションの開発・運用プラットフォームとして利用することもできる。
「プライベートクラウド、パブリックプラウドなど、複数のクラウドと接続しても、クラウドごとの差異をアプリケーション側で吸収することで、ユーザーは何も意識することなく適材適所のクラウド利用ができる」(山野氏)。
同社では今後、サービスプロバイダーとの連携によるクラウド移行のサポート、データサイエンティスト育成トレーニングの強化、Pivotalとの連携によるビッグデータコンサルティング業務の強化、RSA事業本部との事業継続や災害対策へのさらなる取り組み強化などを実施していく。
ViPRは、2013年下半期に提供開始予定。