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現場に聞いたAWS活用事例 第1回

会場でランチのお寿司を食べた聴衆が依頼されたのは?

寿司もITも鮮度が一番!あきんどスシローのAWS活用術

2013年06月07日 08時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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未活用のデータをAWS上で解析

 そして、これで気をよくした情報システム部が次に挑んだのが、既存システムのデータ活用だ。

 もとより、あきんどスシローは先進的な技術の活用を以前から進めており、回転寿司の皿の下にICタグを付けて、古い寿司を自動的に廃棄する仕組みはよく知られている。「お客様は当然できたてを食べたいわけですが、『レーンに流れている寿司は古い』というイメージがある。こうしたイメージを払拭し、新しいメニューをレーンからとって食べてもらいたい」(田中氏)ということで、ICタグの情報を元に15分経つと自動的にレーンの寿司を廃棄するのだ。

 そのほかにも、スシローの店舗ではテーブルごとの受発注はもちろん、人数や着席時間までシステムで管理している。回転寿司は来店時間によって食べる量が変わるので、システムが提供する1分後と15分後の需要予測を店長が見て、流すネタや流量を決めているのだ。

 しかし、こうしたシステム化の恩恵として溜まった40億という膨大な過去のデータは、今まで活用されずに死蔵していたという。情報システム部が進めたのは、これらのデータをクラウド上で分析し、ビジネスに活かすことだ。

最先端のITシステムを用いているが、40億のデータは未活用

 具体的には、2年分の売り上げデータを収集し、クラウド上のETLツールでクレンジングした後に、DWH(データウェアハウス)に格納。これをウィングアークの「Dr.SUM EA」で解析し、BIツール「Motion Board」で可視化するというものだ。情報システム部は、この売り上げ分析システムの検証環境をAWS上に構築。経営陣に実際に見せることで、導入までこぎつけた。「検証環境の構築は2日。10万円で構築できた」(田中氏)と、スピードとコストはピカイチだった。

 これを使うと、売れているネタの地域差や商品売り上げのロングテール傾向などが見えるため、商品の提供方法やサプライチェーンでの商材の調整などに活用しているという。営業分析でも活用されており、新規店と既存店の廃棄率の差などをチェックし、研修やオペレーションの改善に活かしているとのことだ。

地域ごとの人気のネタも一目瞭然

テイクアウトを刷新!聴衆も協力?

 そして、情報システム部が最近挑んでいるのが、テイクアウトの刷新だ。従来、テイクアウトは紙の伝票で行なわれていたため、客から不評だったという。「そもそも注文してから15分くらい待たされる。紙の伝票はわかりにくいし、印刷スケジュールの関係から新商品が入ってなかったりする」(田中氏)。また、現場のオペレーションにおいても、手書きは読み違いが多く、メニューの入れ間違えのリスクが発生していた。電話やFAXでの注文も、とにかく1つの注文の完結まで時間がかかり、効率が悪いという課題があった。

紙の伝票をベースにしていたテイクアウトは大きな課題だった

 そこで、店舗内でのテイクアウトの注文をとれるシステムを作るとともに、ネットや電話/FAXで注文を受け、取りに来てもらう仕組みを構築することにした。これは「どれくらいにできますという納期回答の仕組みはあるけど、お客様からすれば待つことには変わらない」からだ。重要なのは、これら製造指示のシステムはあくまで実験として作っているという点だ。「クラウドなので、ダメならやめます」(田中氏)とのことで、フリーのパッケージで気軽にチャレンジしているという。

田中氏が披露した注文サイトのプロトタイプ

 実際のシステムは、クラウドならではのメリットを生かして複数サイトで運用され、うまく分業している。システム設計やデザインは東京で行なっているが、コーディングやテスト、運用監視は中国にオフショア。クラウド上で不安があるセキュリティも、外部のプロフェッショナルに監視を委託しているという。また、データ保護や災害対策にも配慮しており、「AWSのストレージゲートウェイを介して、シンガポールのS3にコピーするのが一番安上がりと営業の人に教えてもらった」(田中氏)とのことで、低価格でDRを実現している。グローバルでの協業体制が気軽に構築できるのは、AWSの大きなメリットといえるだろう。

グローバルサイトで運用し、AWSを最大活用

 最後、田中氏は「われわれ『あきんど』という会社名なので、私たちの寿司を食べてもらった以上、みなさまには若干協力してもらいます」と、AWS上にプロトタイプとして構築したテイクアウトサイトのフィードバックを聴衆に依頼。IDとパスワードと披露し、「GoogleAnalysticで何人来てくれるかチェックしています」と会場を沸かせ、講演を締めた。

会場で配られたスシローのランチ。吟味ネタも入っており、とても美味しかった!

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