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現場に聞いたAWS活用事例 第1回

会場でランチのお寿司を食べた聴衆が依頼されたのは?

寿司もITも鮮度が一番!あきんどスシローのAWS活用術

2013年06月07日 08時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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AWS Summit 2013の2日目にあたる6月6日には、回転寿司チェーンを展開するあきんどスシローがIT活用やクラウド導入について披露した。自慢の寿司をふるまいながらの講演は、回転寿司屋の舞台裏がつまびらかにされた笑いの絶えないセッションとなった。

中とろ vs システム

 「スシロー」は関西を中心に全国350店舗を展開する回転寿司のチェーン店。年間の来店客数は日本の人口と同じ1億2000万人にのぼり、売上高では1000億円を超えるという。全店舗1皿105円という均一価格で有名だが、えびアボガドを始め、既存の寿司の常識を覆す新しいメニューを出すことでも知られている。最近では、189円の吟味ネタという取り組みも進めている。

あきんどスシロー 情報システム部 部長の田中覚氏

 今回のAWS Summit 2013では、情報システム部 部長の田中覚氏が「中とろより価値あるITを。あきんどスシローのクラウド活用術」というタイトルで、AWS上に構築したすしの売り上げ分析システムとテイクアウトの受注システムについて説明した。

 田中氏がまず説明したのが、企業理念である「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」の意味だ。

企業理念である「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」

 もともとネタに合わせて値段を変えてきた普通のお寿司屋だった同社が、1皿100円(税抜)という均一料金を導入した背景は、やはりライバルとなる回転寿司チェーンが増えてきたことがある。しかし、「実際に1皿100円にしてみると、お客さんは今までの倍の量を食べ、お腹いっぱいになって喜んで帰って行った」(田中氏)という。こうしたことから、おいしいお寿司をいっぱい食べてもらうという企業理念が生まれた。

 とはいえ、その後競合の回転寿司チェーンも差別化に志向をこらし始めた。「きれいで豪華な店もあるし、サービスを重視した店も増えてきた」(田中氏)。そこで、お寿司がおいしいだけではなく、「心も一杯」を掲げて、サービスや品揃えにますます力を入れるようになったとのことだ。

 この企業理念はお題目だけではなく、意思決定の基準にもなっている。つまり、ITもこの企業理念を実現できるのかが、投資の基準になるという。役員会議でシステムの話をしても、「中とろでお客さんが喜んでくれんのは想像できるけど、そのシステム入れてお客様が喜ぶのは想像できへんねん、と社長に言われる。つまり、中とろ vs システムという構造になる」(田中氏)というわけだ。

中とろ vs システム

 こうした企業理念に基づいた厳然とした価値基準があり、さらに情報システム部が5名しかいないということから、必然的にクラウドという話になる。「サーバーを置く場所がいないし、管理するスキルもない。高めのスペックで無駄になったり、システムが止まるとどつかれる(笑)」など、あらゆる理由でクラウドの導入は必然的な選択肢だったという。

企業理念から「なぜクラウドか?」は明確

TV放送のトラフィック増対応で味をしめる

 最初にAWSのクラウドを導入したのが、同社のWebサイトだ。同社のサイトは、土日や大型連休になるとアクセスが増え、TV放送で紹介されると、さらにアクセスが増える。このトラフィックはもはや完全に予想できず、「2月に『お願いランキング』という番組で紹介されたが、最近はスマホを片手にTVを観るので、短時間にアクセスが集中する」(田中氏)といった状況だったという。

TV放送の内容によってリアルタイムにアクセスが変化

 これに対して、同社の情報システム部は事前に知らされていたTV放送のタイミングにあわせ、サーバー増強をあらかじめスケジューリングした。AWSのイメージコピーを使って、サーバーを3日間増やしたのだ。さらにスマートフォンなどの突発アクセスに備え、トラフィックに応じて動的に増設を行なうオートスケールも設定しておいた。「オートスケールは便利だが、高い。だから基本はサーバー増設で対応し、念のためにオートスケールを仕掛けておいた」(田中氏)。こうした対応でかかった運用費は5万円の追加のみ。オートスケールも使わず、準備も1日増えただけで済んだという。

(次ページ、未活用のデータをAWS上で解析)


 

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