マイクロソフト・トゥディ 第48回
なぜ、マイクロソフトは「デバイス&サービスカンパニー」を打ち出したのか?
マイクロソフトは、ハードウェアに積極的に介入する
2013年06月06日 21時00分更新
ハードウェア、ソフトウェア、サービスまでを
トータルに提供
補足するように、日本マイクロソフトの樋口泰行社長も次のように説明する。
「以前のPCは、処理速度が速ければいい、あるいは性能が高ければいいというように、技術だけが注目されていた。それが使いやすい条件だったといえる。しかし今は、『どんな付加価値が得られるのか』『どんなワークスタイル、どんなライフスタイルが必要になるのか』が重要になってきた。
また、デザイン性も重視されている。加えて、そうした製品をいち早く市場投入するといったことも求められている。ハードウェアと、ソフトウェアをうまく組み合わせた『すり合わせ』が重要になり、Windowsストアのようにサービスまでトータルで提供する必要も出てきている。ハードウェアメーカーが得意とする研ぎ澄まされた製品も必要だが、ハードウェア、ソフトウェア、サービスまでをすべてまとめた形で投入する製品も大切になってくる」
マイクロソフトブランドのデバイスとして最たるものが「Surface」であり、年末にも予定されている「XBOX ONE」ということになる。また、サービスでは、「Windowsストア」や、XBox向けの「Xbox Live」があり、クラウドサービスのOffice 365なども含まれることになる。
マイクロソフトとハードウェアのエコシステム
ただ、マイクロソフトとアップルとの大きな違いは、マイクロソフトには、ハードウェアのエコシステムが存在するということだ。
アップルは、ソフトウェアやコンテンツ、周辺機器やアクサセリーでのエコシステムは構築しているが、ハードウェアそのものは1社の独占である。
一方マイクロソフトには、全世界にハードウェアを開発するPCメーカーが存在する。日本だけをみても、13社のPCメーカーから、250機種以上のWindows 8搭載デバイスが投入されている状況だ。
これは、戦略上、大きな差となる。このバランスをどう取るかが、デバイス&サービスカンパニーを目指すマイクロソフトにとってのテーマだといえるだろう。
Surfaceに関しては、いよいよ日本においても売り上げ予算が設定され、今後本腰を入れて販売することになるのは明らかだ。
バルマーCEOは、「パートナーとの関係はこれからも重要であり、一緒になって次世代のデバイスを作っていく」と語り、樋口社長も、「Surfaceは、PCメーカーと同じカテゴリーで戦っている製品ではなく、タブレットという新たなマーケットを創造する、新たなカテゴリーの製品として投入したものである。
そして、Windows陣営と戦うのではなく、Windows以外の陣営との戦いになる。Windows 8を搭載した数多くのPCの中から最適な製品を選んでもらうことができ、結果としてWindows陣営全体を盛り上げることになる」と、むしろハードウェアのエコシステムを強みにする考えを示す。
先頃、来日した米マイクロソフト コーポレートバイスプレジデント兼チーフエバンジェリスト、Developer & Platform Evangelism担当のスティーブ・グッゲンハイマー氏も異口同音に、「マイクロソフトは、業界の変化を受けてデバイスとサービスの方向に踏み出した。そして、マイクロソフトがすべてのハードウェアを作るわけではない。パートナーと緊密なエコシステムを確立している点が大きな特徴であり、これはデバイス&サービスの時代でも変わらない」とする。
だが、その一方でバルマーCEOは、「マイクロソフトは、今後も新たなデバイスやサービスを市場に導入することになるのは間違いない」と、継続的にこの姿勢を維持する考えを示す。
「デバイス&サービスカンパニー」を成長戦略の柱に
現在、マイクロソフト社内においては、7月からスタートする同社2014年度の事業方針を策定中だ。
その中においても、「デバイス&サービスカンパニー」を成長戦略の柱にする姿勢には変わりがないようだ。関係者の声を聞くと、むしろ「デバイス」という言葉をさらに強調することにもなりそうだ。
そうした意味でも、新年度はこれまで以上に本腰を入れて、デバイスとサービスを強化していくことになるだろう。
これは、Surfaceのさらなる進化も視野に入れていることを意味しているといえる。
デバイス&サービスカンパニーとしての舵取りはどのような形で進むのだろうか。7月からの新年度に打ち出されるマイクロソフトの事業戦略には注視しておきたい。
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